栄養素 - たんぱく質

アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】

監修者 西 ひかり 薬剤師 公開日:2024-04-16 最終更新日:2025-03-24

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アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】

監修者西 ひかり 薬剤師 公開日:2024-04-16 最終更新日:2025-03-24

アルギニンは、エネルギー産生に関わる非必須アミノ酸の一種で、体内で重要な役割を果たす一酸化窒素(NO)の原料にもなります。アルギニンは、疲労回復や男性機能にサポートするサプリメントのの多くに配合されている成分です。

しかし、すべての人がアルギニンを摂取するのに適しているでしょうか?アルギニンを摂取すればするほど効果が倍増するのでしょうか?薬剤師が安心してアルギニンを摂取する方法をご紹介し、元気と活力を得るお手伝いをします!

 

アルギニンってどんな栄養素?

アルギニンはアミノ酸の一種で、エネルギーを産生する栄養素であるたんぱく質の構成要素のひとつです。アルギニンは、体内で合成できるため、非必須アミノ酸に分類されます

しかし、ストレスの多いときや病気のとき、また成長期などは一時的にアルギニンの需要量が増加し、速やかに分解されるにより、体内での合成量が不足する場合があるため、アルギニンは条件付きアミノ酸とも呼ばれています。

とくに、子どもは必要量を合成できないため、食事からの摂取が重要です。アルギニンは肉、魚介類、卵、ナッツ、全粒穀物、豆類、乳製品などに含まれています。日常で常に疲労を感じている方は、たんぱく質が多い食品を多くに摂取すのもおすすめです。

アルギニンは一酸化窒素(NO)の生成し、血管を広げて血液流行を改善し、成長ホルモン、免疫機能、疲労回復や男性機能にサポートする効果が期待されています。

また、アルギニンを適切なタイミングで適切な量を補給することが、正常なエネルギー産生や代謝を維持するのに役立ちます。

 

アルギニンと一酸化窒素(NO)

アルギニンは一酸化窒素(NO)の産生を促すアミノ酸です。アルギニンによる生成した酸化窒素は血管を広げて血流を増やす働きがあります。そのため、アルギニンの補給により、血流の改善、免疫の向上、EDの改善などの効果が期待できます。

 

アルギニンの効果と働き

アルギニンは、男女問わず幅広い効果が期待されており、以下のような効果が期待できます。

  1. 血流改善

  2. 男性の性機能改善

  3. 筋肉増強と運動パフォーマンス

  4. 疲労回復

  5. 免疫機能を高める

  6. たんぱく質の合成による組織修復作用

  7. 生活習慣病の予防

  8. 体力増強

  9. 成長ホルモンンの分泌を促進

  10. 血糖値のコントロール

それぞれの効果について詳しく解説していきます。

 

1. 血流改善

血流改善

アルギニンという物質が体内で分解されると、一酸化窒素(NO)という物質が作られます。この一酸化窒素は血管を広げる働きがあり、血流をスムーズにする作用があります

これにより、血管が詰まりにくくなり、動脈硬化のリスクを減らすことができ、生活習慣病や心血管系の健康をサポートする効果が期待できます。

また、血流が良くなることで、筋肉に必要な栄養がしっかり届くようになり、筋肉の健康にも役立ちます。

 

2. 男性の性機能改善

男性の性機能改善

アルギニンが生成する一酸化窒素(NO)により、陰茎の血管も拡張され血流が改善されます。

それにより大量の血液が流れ込み、勃起状態を導くことになるため、アルギニンは男性機能の改善に効果的であることがわかっています。

アルギニンは男性機能をサポートするサプリメントの成分としてもよく使用されています。

 

3. 筋肉増強と運動パフォーマンス

筋肉増強と運動パフォーマンス

アルギニンは成長ホルモンの分泌を促す作用があります。

成長ホルモンの分泌が促進されることで、エネルギーを産生するのに重要な栄養素であるたんぱく質の合成も促進され、筋肉の増強が期待できます。

また、アルギニンが産生する一酸化窒素(NO)には、筋肉のエネルギー源となるグルコースの取り込みを促進する作用があり、これにより運動パフォーマンスの向上や疲労回復が期待できると考えられています。

 

4. 疲労回復

疲労回復

筋肉の疲労物資である乳酸は、筋肉が収縮するためのエネルギー源である筋グリコーゲンが使われ、分解されることで生成されます。

前述の通り、アルギニンの生成する一酸化窒素(NO)にはグルコースの取り込みを促進する作用があるため、エネルギー代謝を促進し、疲労回復に役立つと考えられています。

また、長時間の運動による運動性の疲労時には、アンモニアが生成されることが知られています。

アルギニンにはアンモニアが増加するのを抑える作用があるため、血中のアンモニア濃度を下げて疲労回復をサポートすると考えられています。

 

5. 免疫機能を高める

免疫機能を高める

アルギニンは、免疫機能の向上に関係していると考えられています。

海外の研究によると、アルギニンにより感染症の発生が抑制されたという報告や、細菌やウイルスを攻撃するリンパ球の割合や活性が上昇したという報告があります。

また、周術期(手術前後の期間)には感染症の合併を減らすために、アレルゲンが含まれた免疫栄養素が投与されることもあります。

 

6. たんぱく質の合成による組織修復作用

たんぱく質の合成による組織修復作用

アルギニンはたんぱく質を構成する重要なアミノ酸の一つです。たんぱく質は人体の細胞の主要な構成物質であるため、アルギニンは傷などの組織修復作用もっていることがわかってきています。(8)

 

7. 生活習慣病の予防

体内でアルギニンがシトルリンに変換される過程で、一酸化窒素(NO)が合成されます。

アルギニンによって一酸化窒素の合成が促進されると、一酸化窒素によって血管が拡張され、血流が促進します。

血管が拡張することで血圧が低下しやすくなり、血流が促進すると動脈硬化などの血管系の病気のリスク低下につながります。

 

8. 体力増強

体力増強

体内でアルギニンとグリシンによって合成されるクレアチニンは、ATPからもらったエネルギーをクレアチニンリン酸として貯蔵します。

体内のクレアチニンの大半が筋肉に存在するため、スポーツなどの筋肉を動かす時のエネルギー不足時に、クレアチニンリン酸に貯蔵されたエネルギーが使用されます。

アルギニンの摂取はエネルギー産生を促進し、体力増強の効果が期待できます。
 

9. 成長ホルモンンの分泌を促進

成長ホルモンは、体の成長や修復を助ける大切なホルモンです。アルギニンというアミノ酸は、成長ホルモンの分泌を促進する働きがあります。

アルギニンを摂ると、体がもっと成長ホルモンを出すように働きかけるため、筋肉を作る手助けや、骨の成長を促すことが期待できます。

このため、アルギニンは特に成長期の人にとって、健康や体作りにとても重要な役割を果たしています。
 

10.血糖値のコントロール

インスリンは、膵臓から分泌されて血糖値を下げ、血液中の糖を細胞に取り込んでエネルギーに変える働きがあります。

食事後に血糖値が上がると、アルギニンがインスリンを分泌させるのを助けます。アルギニンは「グルコキナーゼ」という酵素と結びついて、糖を変化させてインスリンを多く出させるのです。

逆に、アルギニンが足りないと、グルコキナーゼがうまく働かなくなり、インスリンが不足することになります。

 

アミノ酸とは
アミノ酸は五大栄養素であるたんぱく質質を構成する重要な成分で、体内でさまざまな機能を果たします。

 

自然界には約500種類のアミノ酸が存在し、そのうち20種類が人体のタンパク質を作るために使われます。これらは、体内で合成できる非必須アミノ酸と、合成できない必須アミノ酸に分けられます。

参考:アミノ酸とは?筋肉や成長に良いアミノ酸の4つ効果と摂取タイミングを伝授

 

1日のアルギニン摂取目安量は?

食生活における栄養バランスの乱れにより、摂取されるアルギニンが必要量に満たない場合は、適切なタイミングに適切な量を補給する必要があります。

では、具体的にどれだけのアルギニンを摂取すれば良いのでしょうか?厚生労働省の食事摂取基準では、アルギニンの摂取目安量は決められていませんが、効果を発揮する摂取量は1日に2,000~5,000mgといわれています(4)

 

アルギニンが多い食べ物

以下は、日本文部科学省の食品成分データベースに基づく成分量100gあたりのアルギニン含有量表です。(1)

種類 食品 100gあたり
アルギニン含有量(mg)
肉類 ビーフジャーキー 3,500
鶏胸肉 2,600
豚ヒレ肉 2,500
牛もも肉 1,800
魚介類 ほたて貝(乾燥) 5,300
干しエビ 4,600
とびうおの煮干し 5,000
卵類 生卵 1,200
ゆで卵 1,100
ナッツ類 落花生 3,300
ごま 2,900
アーモンド 2,500
全粒穀物 小麦胚芽 2,800
米ぬか 1,100
そば(全粉層) 1,200
豆類 湯葉 4,300
きな粉 3,000
牛乳など乳製品 粉チーズ 1,800
脱脂粉乳 1,100
普通牛乳 110
野菜 にんにく(生) 1,100
枝豆(ゆで) 830


アルギニンを効率よく摂取するためには、アルギニンが豊富に含まれる肉、魚や卵を選ぶことが重要です。

肉類では、ビーフジャーキーや鶏胸肉、豚ヒレ肉などがアルギニンを多く含んでおり、特にビーフジャーキーはその含有量が非常に高いです。

魚介類にもアルギニンが豊富で、乾燥したほたて貝や干しエビ、とびうおの煮干しはそれぞれ非常に高い含有量を誇ります。

生卵やゆで卵は日常的に摂取しやすいし、アルギニン源としておすすめです。

落花生やごま、アーモンドもアルギニンを多く含んでおり、特に100gあたりの落花生は3,300mgアルギニンを含んでいます。

その他にも、全粒穀物や豆類、乳製品にも一定量のアルギニンが含まれています。アルギニンを積極的に摂取したい場合、肉、野菜、魚などの食品をバランスよく取り入れることが大切です。

 

アルギニンが豊富な食品のポイント(100gあたりのアルギニンの含有量):

  • 肉類:ビーフジャーキー(3,500mg)、鶏胸肉(2,600mg)、豚ヒレ肉(2,500mg)
  • 魚介類:ほたて貝(乾燥)(5,300mg)、干しエビ(4,600mg)、とびうおの煮干し(5,000mg)
  • 卵類:生卵(1,200mg)、ゆで卵(1,100mg)
  • ナッツ類:落花生(3,300mg)、ごま(2,900mg)、アーモンド(2,500mg)
  • 全粒穀物:小麦胚芽(2,800mg)、米ぬか(1,100mg)、そば(全粉層)(1,200mg)
  • 豆類:湯葉(4,300mg)、きな粉(3,000mg)
  • 乳製品:粉チーズ(1,800mg)、脱脂粉乳(1,100mg)
  • 野菜:にんにく(生)(1,100mg)、枝豆(ゆで)(830mg)
アルギニンが多い食品
アルギニンは肉、魚介、豆、ナッツ、野菜に豊富で、健康に役立つ栄養素です。
アルギニンが多い食べ物15選|推奨摂取量と摂取するポイントも紹介


 

アルギニンの摂取タイミング

アルギニンは、体内で一酸化窒素(NO)の生成を助ける重要なアミノ酸で、血流を改善し、筋肉の回復を促進するなど、運動パフォーマンスに役立つ多くの効果があります。

ここでは、アルギニンの効率的な摂り方について、運動前、運動後、そして平日の日中に摂取する場合のメリットを紹介します。

 

1. 運動前に摂取する

運動前にアルギニンを摂取することで、一酸化窒素(NO)の生成が促進され、血管が拡張して血流が増加します。

これにより、筋肉への酸素や栄養素の供給が向上し、持久力やパフォーマンスが向上する可能性があります。また、筋肉への血流が増えることで、運動中の疲労感を減少させ、より効果的なトレーニングができるとされています。

理想的には、運動の30分から1時間前にアルギニンを摂取するのが効果的です。

 

2. 運動後に摂取する

運動後にアルギニンを摂取すると、筋肉の回復をサポートします。

運動後は筋肉がダメージを受け、修復過程で栄養素が必要となります。

アルギニンは血流を改善し、筋肉への栄養供給を高め、回復を促進します。また、アルギニンはたんぱく質を構成する重要なアミノ酸の一つのため、筋肉の合成や修復に不可欠な栄養素です。

運動後の30分以内に摂取することが推奨されます。

 

3. 平日の日中に摂取する

運動をしない日でも、アルギニンを摂取することには健康上の利点があります。

アルギニンは免疫力をサポートしたり、血管の健康を改善したりする働きがあるため、日常的に摂取することで、健康維持や疲れにくい体作りにも役立ちます。

平日の日中に摂取する場合、食事と一緒に摂ることで、吸収効率を高めることができます。

 

アルギニンの副作用と注意点

アルギニンを摂取するにあたって、どんな注意点があるのでしょうか。アルギニン摂取による副作用と注意点について解説します。

 

アルギニンの副作用

アルギニンは、尿素サイクル異常症に対する医療用医薬品でもあるため、副作用の発現頻度の調査も行われています。承認前の臨床試験や市販後調査でのアルギニン摂取による副作用としては

  • 下痢・嘔吐などの消化器症状
  • かゆみ
  • 肝機能異常
  • 眠気
 

などが報告されています(7)

 

アルギニンの注意点

 
  1. 妊娠中、授乳中の方は、長期間にわたるアルギニンの補充に関する安全性情報が十分ではないため、摂取を避けるようにしましょう。

  2. アレルギー反応を引き起こしたり、気道の炎症を悪化させることがあるため、喘息の方は摂取を控えるようにしましょう(6)

  3. ヘルペスウイルスは体内で複製される際に大量のアルギニンが必要となるため(5)、ヘルペスの方は一時的に摂取を控えるようにしましょう。

  4.  低血圧の方や血圧に関係する薬を服用中の方は、血圧が低下する可能性があるため、医師に相談の上で摂取することをおすすめします。

  5. 腎機能や肝機能が低下している方、高尿素窒素血症の方は、症状が悪化する可能性があるため、使用を控えるようにしましょう。

 

アルギニン製品の選び方

粉末、錠剤、カプセル

粉末の場合、水分摂取と同時に水に溶かして飲むことができます。摂取目安の上限の範囲内で、自分で調節して摂取しやすいというメリットがあります。

一方、錠剤やカプセルは、アミノ酸独特のにおいや味を感じにくいというメリットがあり、摂取を続けやすい形状を選ぶようにしましょう。
 

その他の配合成分

アルギニンと一緒に配合されている成分にも注意して選ぶようにしましょう。

シトルリン

アミノ酸の1つで、体内でアルギニンに変換されます。アルギニンとシトルリンを同時に摂取することで、血中アルギニン濃度が上昇しやすくなるため、アルギニンと一緒にシトルリンを摂取するのもおすすめです。
 

オルニチン

アルギニンと一緒に、アミノ酸の1つであるオルニチンを摂取することで、運動効率アップが期待できたり、ビタミンB群を一緒に摂取することでエネルギーの代謝がよりスムーズになったりします。
 

亜鉛

亜鉛などのミネラルなどをアルギニンと一緒に摂取し、効率的にアルギニンの効果を高め、体のコンディションを維持できるようにしましょう。

アルギニンとシトルリン
アルギニンやシトルリンなどのアミノ酸は、NO回路をサポートし、男性の健康や機能向上に役立つとされています。
参考:
アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】
シトルリンは男性に4つ効果は?男性の魅力の源と疲れ知らずで若々しく筋肉質な体へ導く

よくある質問:L-アルギニンとは?

一般的に、アミノ酸は分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を持っており、互いに鏡に映すと同一構造になるものが存在します。

これを光学異性体と呼び、L体とD体として区別します。お体のたんぱく質を構成するアミノ酸はほとんどがL体で、L-アルギニンとはアルギニンのL体のことを表しています。

調味料や栄養強化剤に添加されているアルギニンは、ほとんどはL-アルギニンです。