ビフィズス菌は、長年「善玉菌」として親しまれてきた腸内細菌で、腸内環境を整えるほか、脂肪の蓄積抑制や免疫力強化、メンタルヘルスへの良い影響など、多くの健康効果が報告されています。
近年では、プロバイオティクスの代表的な菌としても注目されています。
ビフィズス菌とは

ビフィズス菌はビフィドバクテリウム属(学名Bifidobacterium)に分類される菌で、腸内フローラに存在する「善玉菌」の代表的な菌です。
ビフィズス菌の働き
腸内フローラのバランスが崩れ、悪玉菌が増えると、腸の働きが悪化し、精神疾患や糖尿病、メタボリックシンドローム、免疫疾患などのリスクが高まると言われています(1)。
ビフィズス菌は悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を改善するだけでなく、免疫力を高め、様々な疾患の予防にも寄与するとされています(2)。
また、近年ビフィズス菌は「プロバイオティクス」として健康効果が注目されており、炎症や高血圧、糖尿病、酸化ストレスから体を守る働きもあると多くの研究で示されています(3)。
私たちの腸内には、100兆個にも及ぶ腸内細菌が棲息しており、さまざまな種類の腸内細菌がそれぞれ集団を形成して、無数のシグナル物質を産生しています。
その腸内環境は「腸内フローラ(花畑)」と呼ばれています。
ビフィズス菌の占有率は加齢とともに低下

年齢とともに、腸内のビフィズス菌の割合が減っていくことをご存じでしょうか。乳児期には腸内のほとんどを占めていたビフィズス菌も、加齢により10%以下にまで減少してしまうと言われています。
この変化は、食生活やホルモンバランスの変化が影響していると考えられており、腸内環境の乱れは免疫力の低下や体調不良の原因にもなり得ます。
ビフィズス菌を意識的に取り入れることが大切です。発酵食品やサプリメントなどを上手に活用し、腸内のバランスを整えることで、心身のコンディションも安定します。
大腸に最も多くすむ善玉菌

ビフィズス菌は酸素が苦手で、大腸内部の酸素がほとんどない環境に偏って生息することがよく知られています(6)。大腸にすむ99%善玉菌はビフィズス菌です。
短鎖脂肪酸の生成
ビフィズス菌は、腸内で酢酸や酪酸などの「短鎖脂肪酸」を多く生成し、免疫反応の調整や脂肪蓄積の制御に深く関与しています。
短鎖脂肪酸は腸のバリア機能を高め、炎症を抑える働きに加え、代謝機能の維持にも影響を与えます。
加齢に伴ってビフィズス菌が減少すると、短鎖脂肪酸の産生も低下し、免疫力や代謝バランスの乱れにつながる可能性があります。そのため、腸内環境を整え、ビフィズス菌の働きを保つことが健康維持の鍵となります。
ビフィズス菌を使用した製品
代表的なビフィズス菌であるBifidobacterium longumを使用した製品は、日本でもヨーグルトや乳酸菌飲料に配合され、広く市場に流通しています(5)。
また、市販されている製品では、ビフィズス菌を含む製品が「乳酸菌製品」として紹介・販売されることが一般的です。
ビフィズス菌の効能を解説!
プロバイオティクスとして腸内環境を改善する
プロバイオティクスであるビフィズス菌は、腸に定着することで悪玉菌として知られる一部の病原体を打ち負かし、病原性感染を抑制する効果が知られています(9)。
ビフィズス菌にはさまざまな種類がありますが、Bifidobacterium lactisなどのビフィズス菌を摂取すると、排便回数が有意に増加する結果が研究で報告されており、便通改善の効能も示唆されています(10)。
私たちの大腸にいる100兆個におよぶ腸内細菌は、消化物を代謝することで無数のシグナルを生むため、「脳腸相関」として脳とも密接に関わるほど影響力が大きいと考えられており、腸内で活躍するビフィズス菌の効能が全身へわたることが示唆されています(11)。
正常な免疫反応の調整に関わる
ビフィズス菌は、正常な免疫反応を維持するうえで重要な役割を果たしていると考えられており、大腸内のビフィズス菌の減少は、さまざまな免疫関連疾患発症リスクの上昇と関連することが研究により示唆されています(12)。
これまでの多くの研究により、ビフィズス菌のさまざまな株がT細胞や上皮細胞などの免疫に関わる細胞に働きかけることで、過剰な炎症反応を抑えることに貢献すると考えられています。
免疫反応を調整する効能を調べた研究では、過剰な免疫反応によって炎症が起こると考えられている「活動性潰瘍性大腸炎」の日本人患者を対象に、
ビフィズス菌の一種である Bifidobacterium longum 536という株を8週間投与しました。
その結果、プラセボ群と比較して、症状が有意に改善されたと報告されています(13)。
このような報告からも、ビフィズス菌が持つ免疫反応への効能が示唆されています。
脂肪の蓄積を減らす
ビフィズス菌は短鎖脂肪酸や不飽和脂肪酸などの、脂肪の蓄積に働きかける脂肪酸を腸内で生成することが知られています(14)。
短鎖脂肪酸は血糖代謝やインスリン感受性を調整することで体重管理に貢献し、不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを抑えることが多くの研究で示唆されている、脂質代謝や心血管の健康において重要な物質です(15)。
そのため、ビフィズス菌は脂肪の蓄積を抑えるうえでも効果的に働くことが示唆されています。
実際に、高脂肪食を与えられたマウスを用いた実験では、ビフィズス菌の一種Bifidobacterium adolescentisの投与により、マウスの内臓脂肪重量や体重が減少し、メタボリックシンドロームが改善されたと報告されています(16)。
メンタルヘルスをサポートする
ビフィズス菌は、無数の腸内細菌が生み出すシグナルが脳とも深く関わるという「脳腸相関」の観点から、メンタルヘルスへの影響も注目されています(17)。
ビフィズス菌のBifidobacterium longum 1714という株を用いた研究では、健康なボランティアにBifidobacterium longum 1714またはプラセボを4週間摂取してもらい、社会ストレステスト後の脳波やストレス状態を比較した結果、Bifidobacterium longum 1714を摂取したグループで活力の向上や精神的疲労の緩和などの効果が示されています(18)。
ビフィズス菌の摂取方法
上記の通り、ビフィズス菌は全身におよぶさまざまな効能が示唆されている重要な善玉菌で、プロバイオティクスの代表的な存在です。
そんなビフィズス菌は、どのように摂取すると効果的なのでしょうか?
プロバイオティクスを摂る
乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスは、それぞれが幅広い効能を持つと考えられており、どれか特定の菌に偏らないようあわせて摂取することが推奨されています。
イヌリンとフラクトオリゴ糖と一緒に摂る
また、プロバイオティクスを腸内で増やし活性化させるエサのような物質は「プレバイオティクス」と呼ばれ、プロバイオティクスとセットで摂取することが推奨されています。
たとえば、チコリの根やヤーコン、タマネギなどに豊富に含まれる食物繊維イヌリンと、イヌリンを構成するフラクトオリゴ糖は、ビフィズス菌の成長や活動を促進することが多くの研究で知られている、ビフィズス菌と相性の良いプレバイオティクスです(19)。
ビフィズス菌を摂取する場合、他のプロバイオティクスとして知られる乳酸菌や、ビフィズス菌の働きを促進するイヌリン、フラクトオリゴ糖などのプレバイオティクスをあわせて摂取する組み合わせをおすすめします。
ビフィズス菌が多く含まれる食品は?

ビフィズス菌は酸素が苦手な菌であるため、実は通常の野菜や肉にはほとんどの場合含まれません。また、腸内環境に良いとされる漬物や納豆にもほとんどの場合含まれません。
ビフィズス菌の摂取源として代表的なものは、ビフィズス菌を加えて発酵させた種類のヨーグルトや乳酸菌飲料です。
ビフィズス菌は酸素に弱いですが、ヨーグルトや牛乳には酸素があっても発酵できる乳酸菌が含まれており、乳酸菌が発酵することで酸素が消費されてヨーグルト内部の酸素が少なくなることで、ビフィズス菌が発酵できるようになっています(7)。
近年は、私たちの健康に寄与する生きた微生物を摂取する「プロバイオティクス」の観点から、ビフィズス菌を生きた状態で腸へ届けられるよう、マイクロカプセルなどへ封入する技術を用いた機能性食品やサプリメントも開発されています(8)。
関連記事
腸活食材!善玉菌を増やす食べ物10選ランキング!腸内環境を整えて健康維持に役立てようビフィズス菌に副作用はある?
ビフィズス菌はその安全性について長年研究されてきましたが、今なお安全な菌であると認識されています(20)。
たとえば、米国食品医薬品庁FDAが定める「一般に安全とみなされている食品添加物(GRAS)」を取得しているビフィズス菌株も多くあり、その安全性は広く認められています(21)。
しかし、過度の摂取はかえって腸内細菌の健全なバランスを崩す可能性もあるため、適度な量を継続して摂取することが重要だといえます。