EPA(エイコサペンタエン酸)とは?
EPA(エイコサペンタエン酸)は、DHAと同じく多価不飽和脂肪酸に分類されるオメガ3(n-3系)脂肪酸で、化学式は「C20H30O2」です。青魚に多く含まれ、体と心の健康を支える必須脂肪酸として知られています。日本ではEPAは、健康食品はもちろん、特定保健用食品や機能性表示食品、さらには医薬品としても利用されており、日常的な摂取が推奨されています。
心臓外科専門医からのコメント
EPA の重要性について、甲斐沼 孟 医師は次のように述べています。
EPAの発見と、魚をよく食べる日本の話
EPAが注目されているきっかけの一つは、1960年代にデンマークの博士たちが行った、グリーンランドのイヌイットの人々の調査です。
イヌイットの人たちは、お肉(アザラシなど)が中心の生活なのに、心臓病で亡くなる人がとても少なかったそうです。不思議に思った博士たちが調べたところ、その秘密は、血液の中にたっぷり含まれていた EPA にあると分かりました。
この発見のおかげで、「魚に含まれる脂肪酸が体に良い」ということが世界中に広まりました。
その流れもあり、日本では「日本の子供たちの頭がいいのは、昔から魚をよく食べていたからだ」というエピソードがあるほど、EPA や DHA のようなオメガ3はスゴイ効果が期待され、色々な国で研究されています。
参考:オメガ3の11つの効果・働きと手軽に摂取する方法|認知機能・心血管系の健康を支える
EPAの働き
EPAは体内で生理活性物質の原料となり、生理機能の調整に関与します。特に以下のような健康効果が期待されています:
1.血液をサラサラにする(抗血栓作用)
赤血球膜に取り込まれ、柔軟性を高めることで血液の粘度を下げる作用が確認されています。DHAに比べ、EPAの方がこの効果は高いとされています。また、血管機能の改善にも寄与する可能性があるため、高血圧予防にサポートする効果が期待させれています。
2. 中性脂肪の低下
血中中性脂肪を抑制する効果があり、DHAよりも高い作用が報告されています。脂質異常症の改善も期待されています。
3. 炎症の抑制・免疫調整
抗炎症作用やアレルギー疾患への好影響が期待されています。(3)
4. 抑うつ症状の改善と良好な気分を保つ
研究によると、EPAは感情をうまくコントロールするのにとても役立つことがわかっています。
特に、EPAを多く含むサプリメントが大人の抑うつ症状にも効果があると報告されています。
2011年に発表された、複数の研究をまとめた大規模な分析では、EPAを多く含むサプリメントが成人の抑うつ症状の改善に効果があると報告されています。
この分析では、1日あたり1,000 mg(1g)以下のEPA摂取量でも臨床的な効果が見られることが示されています。さらに、EPAの含有比率がDHAよりも高いサプリメント(特にEPAがDHAの2倍以上含まれるもの)が、より良い結果をもたらす傾向にある。
医薬品として活用されているEPA
EPAの抗炎症作用や、血液をサラサラにする働きが、生活習慣病の予防や改善に役立つことが科学的に認められています。
そのため、EPAの効果は製薬会社からも注目され、高脂血症や脂質異常症などの治療薬として医薬品の成分にも使われています。
EPA製剤とは
EPA 製剤は、一般に高純度の EPA を主成分とし、主に脂質異常症(高脂血症)の治療薬として、医師の処方箋に基づいて医療機関で使われています。
これは、通常のサプリメントとは異なり、国が定めた厳しい基準のもとで「特定の疾患に対する治療効果」が科学的に認められたものです。血中の中性脂肪値を下げたり、血液の凝固を防いだりする作用が期待されます。
サプリメントとの違い
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項目 |
EPA 製剤 |
EPA サプリメント・健康食品 |
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目的 |
特定の疾患の 「治療」 |
健康維持、栄養補給 |
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含有量 |
高用量(一般的に 1 日 1,800mg など) |
一般用量(含有量は製品により異なる) |
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規制 |
医薬品医療機器等法 に基づく厳格な管理 |
食品衛生法 に基づく管理 |
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入手方法 |
医師の処方箋 が必要 |
ドラッグストアなどで自由に購入可能 |
EPAの1日の摂取量
EPAは人の体内で合成されないため、魚を食べることで補給する必要があります。
EPAを含むオメガ3脂肪酸の摂取に関して、日本の食事摂取基準(2025年版)では、成人女性は1日に1.7〜1.9g、成人男性は1日に約2.2〜2.3gのオメガ3脂肪酸を摂取することが推奨されています。
一般的な成人が1日に十分な量のオメガ3を摂取するためには、1日にサバを2尾食べなければなりません。
EPAは生の魚に多く含まれています。しかしながら、食生活の変化に伴い、毎日十分な量の魚を摂取することは簡単ではありません。
適量のDHA・EPAサプリメントにより、健康管理にサポートできるでしょう。
EPAが多く含まれる食品ランキング
EPAを多く含む食品として、サーモン、サバ、マグロ、ニシン、イワシなどの深海魚を挙げています。これらの青魚は、日本の食品成分データベースでも多くのEPAを含んでいることが示されております。
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順位 |
食品名 |
EPA含有量 100gあたりmg |
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1 |
たらのあぶら |
13,000 |
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2 |
くじら/本皮/生 |
4,300 |
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3 |
あんこう/きも/生 |
3,000 |
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4 |
くじら/うねす/生 |
2,200 |
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4 |
やつめうなぎ/干しやつめ |
2,200 |
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6 |
しろさけ/すじこ |
2,100 |
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7 |
たいせいようさば / 生 |
1,800 |
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7 |
あゆ/養殖/内臓/焼き |
1,800 |
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10 |
しろさけ / イクラ |
1,600 |
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10 |
みなみまぐろ/脂身/ 生 |
1,600 |
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10 |
たいせいようさば/ 水煮 |
1,600 |
上記の表にあるように、サバ、サンマ、マグロなどの青魚はとくに多くのEPAを含んでいます。
たらのあぶら(13,000mg/100g)は非常に高いEPA含有量があり、次いでくじらの本皮(4,300mg/100g)やあんこうのきも(3,000mg/100g)などがあります。
また、サバやマグロ、イワシなどもEPAを多く含み、日常的に摂取することで健康をサポートします。
青魚にもさまざまな種類があるため、EPAの含有量を確認してから摂取するようにしてみてください。
EPAの摂取不足
EPAが十分に摂取できないと、血液や血管の健康に悪影響を与える可能性があります。
例えば、血液の流れが悪くなり、血栓ができやすくなることで、心臓病や脳梗塞のリスクが高まります。また、中性脂肪値が上昇し、動脈硬化が進行する恐れもあります。さらに、免疫機能の低下や炎症の悪化も引き起こすことがあるため、日常的にEPAを十分に摂取することが重要です。
EPAの副作用
一般的に、EPAの安全性が高く、高い忍容性を持っています。
しかし、EPAを過剰に摂取すると副作用を引き起こす可能性があります。特に注意すべきは、出血リスクが高まることです。
EPAには血小板の凝集を抑制する働きがあるため、凝血機能が低下している人や手術を受ける予定のある人、または治療を受ける人は、医師や医療専門家と相談することをお勧めします。
過剰な摂取が免疫機能に悪影響を与える可能性があるため、適量を守ることが重要です。
EPAを含むオメガ3系脂肪酸の副作用は一般的に軽度ですが、以下の症状が報告されています。
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不快な味
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口臭
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悪臭を伴う汗
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頭痛
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胃腸症状(胸やけ、悪心、下痢)
上記の症状が出た場合は、使用を中止し医師に相談しましょう。
EPAを摂取する際の注意点
EPAを摂取する際のポイントは、以下のような点です:
1. 魚を積極的に摂取する
EPAは主に青魚(いわし、さば、あじなど)に豊富に含まれています。これらの魚を週に数回、バランスよく食べることが推奨されます。
2. 調理注意!EPAは熱に弱い
EPAは加熱によって破壊される可能性があるので注意が必要です。
サンマを中心部温度75度で調理した際のEPAの残存率は、グリル焼きで92%、フライパン焼きで80%、揚げで51%でした。食事からEPAを摂取したい場合は、調理方法に気をつけましょう。
3. 継続的に摂取
EPAは継続的に摂取することで、健康効果が発揮されます。毎日の食事に取り入れることが大切です。
EPAの効果を実感するためには、継続的に十分な量を摂ることが大切です。
複数の研究論文によると、1日あたり1,000mg以上のEPAを12週間以上継続的に摂取することで、健康への良い変化が見られ始めると報告されています。
実際に、一般の方を対象とした研究では、この用量と期間の摂取で血中脂質の改善が示されています。また、メタボリックシンドロームの患者を対象とした研究でも、同様の摂取量で血管機能の改善が確認されています。(9)(10)
短期間での効果を期待するのではなく、日々の食事やサプリメントでEPAを継続的に補給し、心血管や血液をはじめ、全身の健康維持に役立てましょう。
4. サプリメントを活用する
食事から十分にEPAを摂取できない場合、DHA・EPAサプリメントを利用するのも一つの方法です。ただし、摂取量を守り、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
5. EPAと薬の飲み合わせが注意する
EPAを含むオメガ3脂肪酸は、血液をサラサラにする薬との相互作用が認められる場合があります。
相互作用とは、薬と食べ物が影響し合って、薬の効き方や副作用が変わることをさします。
EPAの場合、血液をサラサラにする作用があるため、より出血しやすい状態になってしまう可能性があります。
血液をサラサラにする薬を服用している場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
6.妊娠中・授乳中のEPA摂取について
妊娠中や授乳中の女性にとって、EPAを含むおめが3脂肪酸は特に重要な栄養素です。
母乳にも含まれるオメガ3脂肪酸は、赤ちゃんの健やかな発育をサポートするため、一部の乳児用調合乳にも添加されています。
また、EPAは産後の気分の落ち込みを和らげる効果も期待されており、産後の心身の健康維持にも役立ちます。
ただし、EPAを魚から摂取する際は、魚の種類によっては水銀などの金属が含まれている可能性があるため、過剰摂取には注意が必要です。サプリメントで補給を検討されている場合は、事前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
7. アレルギーの可能性
魚介類アレルギーがある方がサプリメントを摂った際の安全性は明らかになっていないため、EPAを含むサプリメントを服用する前は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。