現代科学の進歩に伴い、新しい発見や新しい知識は次々と出てきています。それは関節への効能が期待されるサプリメントでも同様で、近年グルコサミンに代わる新たな素材として「非変性Ⅱ型コラーゲン」が注目を集めています。
本記事では、そんな非変性Ⅱ型コラーゲンの基本情報から、研究で報告されている効果、相性が良いと考えられるサプリメントなど、非変性Ⅱ型コラーゲン製品を選ぶ上でのポイントをまとめて解説していきます!
非変性Ⅱ型コラーゲン(UC-Ⅱ)とは?
従来、膝関節への効能を期待する市販の製品は、多くがグルコサミンに着目してきました。しかし近年、「非変性II型コラーゲン(Undenatured Collagen Type II)」という成分が注目を集めています。この項目では、そんな非変性Ⅱ型コラーゲンの基本情報についてご紹介します。
コラーゲンとは?
まず、サプリメントとしても身近なコラーゲンについて解説します。
コラーゲンとは、私たちの全身の組織に含まれるタンパク質であり、タンパク質全体の約30%を占めている重要な物質です。コラーゲンは、細胞と細胞の間を埋める細胞外基質として、クッション性の維持や、組織の土台形成、細胞間コミュニケーションの場の提供など、体内で幅広く重要な働きをすることが知られています(1)。
コラーゲンは、特に関節における重要性がよく知られています。コラーゲンは、関節にある軟骨組織のなかで骨組みのような役割を果たしており、関節の過度の使用や荷重によりコラーゲンを含む軟骨組織がすり減ると、痛みや腫れ、こわばりや可動域の制限などを伴う変形性関節症に繋がると考えられています。
日本整形外科学会によると、特に膝関節で生じる変形性膝関節症は多くの人が経験する疾患で、50歳以上の1000万人が変形性膝関節症による痛みを経験しているとされています(2)。
コラーゲンの効果はある?:実例に基づく美容と健康への貢献
非変性Ⅱ型コラーゲンの基本情報
実はコラーゲンには、I型(1型)からXXVⅢ型(28型)まで、28種類ものタイプがあることが知られています(3)。そのなかでⅡ型コラーゲンは、関節の軟骨組織や硝子体に多く分布する繊維状のタンパク質で、数珠つなぎのアミノ酸が3本絡まった三重螺旋構造をしています。
通常、コラーゲンを動物などのタンパク源から抽出すると、その過程で三重螺旋構造が解けた状態となります。この難点を特殊な抽出技術により克服し、生体内にあるⅡ型コラーゲンの三重螺旋構造をそのまま抽出できたものが「非変性Ⅱ型コラーゲン」と呼ばれます。
この生体内に存在する立体構造を保持したまま抽出される非変性Ⅱ型コラーゲンは、その立体構造が免疫系のなかで機能して、過剰な炎症を抑えるなどの効能があると示唆されており、変形性関節症や関節リウマチへの効果について多くの研究がされています(4)。
非変性Ⅱ型コラーゲンの効果は?
非変性Ⅱ型コラーゲンは、主に関節の痛みや可動制限の緩和について、広く研究されてきました。
2002年の非変性Ⅱ型コラーゲンが注目を集め始めた当時の研究では、重度の関節痛に苦しむ女性高齢者を対象に、非変性Ⅱ型コラーゲン1日10mgを42日間摂取してもらい、関節痛に対する効能が調べられました(4)。その結果、起床時や休息後の関節のこわばりの軽減や、痛みの大幅な軽減が認められ、生体内の構造を維持したまま摂取する非変性Ⅱ型コラーゲンの有用性が示唆されました。
その後も多くの研究が行われ、非変性Ⅱ型コラーゲンの関節症に対する効能は支持されています。2022年に報告された近年の研究では、膝の痛みを抱えるボランティアを対象に、非変性Ⅱ型コラーゲンとプラセボの効果が比較されました(5)。
この研究では、計55名のボランティアが、非変性Ⅱ型コラーゲン製剤1日40mg(非変性Ⅱ型コラーゲン約10mg含有)摂取グループ、またはプラセボ摂取グループにランダムに割り当てられ、120日間の摂取期間を経た後、膝関節の機能を評価されました。その結果、非変性Ⅱ型コラーゲン摂取グループで膝の伸ばしやすさが有意に改善したほか、関節痛を発症するまでの運動時間も長かったことが確認され、非変性Ⅱ型コラーゲンが膝関節機能の改善に有効的であることが示唆されました。
また、この研究では非変性Ⅱ型コラーゲン摂取による有害事象もなく、非変性Ⅱ型コラーゲン摂取の安全性も示唆されています。
非変性II型コラーゲンは誰におすすめ?
非変性Ⅱ型コラーゲンは、関節のこわばりや痛みなどを改善する効能が多くの研究により示唆されており、変形性関節症への効果も期待されています。変形性関節症のなかでも、日常的に負荷がかかる膝関節で発症する変形性膝関節症は、多くの人が経験する可能性のある、重要な疾患であると位置付けられています(2)。
変形性膝関節症は、軟骨組織のすり減りにより発症すると考えられており、体重による負荷や、過度の関節使用などがリスク要因として挙げられています。そのため、次に当てはまり関節の悩みをお持ちの方は、非変性Ⅱ型コラーゲンの摂取が効果的であると研究により示唆されています。
非変性Ⅱ型コラーゲンの摂取がおすすめの方
非変性II型コラーゲンの摂取タイミング
非変性Ⅱ型コラーゲンの効能を調べたヒトを対象とする研究では、主に就寝前や朝食時に非変性Ⅱ型コラーゲンを摂取するようデザインされてきました(5)(6)。非変性Ⅱ型コラーゲンの消化についての研究では、胃のpHによる影響が調べられ、中性に近い胃環境の方が非変性Ⅱ型コラーゲンの構造を保ちやすいことが確認されており、胃環境の酸性が弱まっている状態で摂取することが推奨されています(7)。
私たちの胃は、一般的に空腹時に胃酸によって酸性に傾くことが知られているため、ある程度の消化活動を経て胃酸が緩和された状態だと、より非変性Ⅱ型コラーゲンのタンパク質構造が損なわれにくくなると考えられます。
非変性II型コラーゲンのおすすめの選び方
非変性Ⅱ型コラーゲンは、関節機能の改善に有効的であると多くの研究により示唆されていますが、どのように摂取すれば良いのでしょうか?
この項目では、非変性Ⅱ型コラーゲンの選び方や、関節への効能が研究により示唆されている相性の良いサプリメントなど、おすすめの摂取方法をご紹介します。
毎日10mgの非変性Ⅱ型コラーゲンを摂取する
多くのヒトを対象とした研究では、1つのカプセル40mg前後の中に、非変性Ⅱ型コラーゲン10mg以上を含有する製剤が用いられており、関節に対する効能が示唆されてきました(5)(6)。
そのため、同様に1日あたり非変性Ⅱ型コラーゲンを10mg程度摂取できる製品を選択すると、期待する効能を得る上で効果的だと考えられます。
継続的に摂取する
ヒトを対象とした多くの研究で、非変性Ⅱ型コラーゲンの効果は、8週間以上継続して摂取することで確認されています(5)(6)。
コラーゲンサプリメントの効能を実感するためには、一時的なコラーゲンの血中濃度の上昇だけではなく、継続した摂取による組織への影響が重要となります。
そのため、即効性を期待するのではなく、ヒトを対象とした研究のデザインと同様、数ヶ月単位でコラーゲンサプリメントを摂取すると有効的と考えられます。
サメ鼻軟骨由来のプロテオグリカンとの組み合わせ
非変性Ⅱ型コラーゲンの摂取には、Ⅱ型コラーゲンの消耗を抑制して形成を促進する効果が示唆されている、プロテオグリカンとの組み合わせも効果的だと考えられます。
プロテオグリカンとは、Ⅱ型コラーゲンなどとともに軟骨を形成している糖タンパク質の一種で、主にサケの鼻軟骨から抽出したプロテオグリカンが関節への効能を期待したサプリメントで用いられています。
サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンの効能を調べた研究では、膝関節の症状を抱えるボランティアに1日10mgを16週間摂取してもらった結果、プラセボと比較して有意にⅡ型コラーゲンの分解が抑えられたとともに、Ⅱ型コラーゲンに形成が促進され、軟骨組織の維持に有効的であることが示唆されました(8)。
このような軟骨組織の維持に役立つ成分と組み合わせることも、関節への効能を期待する方にとって有効的であると考えられます。
グルコサミンとコンドロイチンの組み合わせ
近年は非変性Ⅱ型コラーゲンに注目が集まっていますが、グルコサミンとコンドロイチンの組み合わせも、関節の症状に対して効果的であることが研究でも依然示唆されています。2022年に報告されたメタ分析研究では、計3,793人の膝関節炎を持つ患者に対して行われた治療効果のデータが、統計的に解析されました(9)。
1,067人のグルコサミン+コンドロイチン治療グループと、その他の治療を受けた残りのグループとの間で、関節炎の評価指標を比較した結果、グルコサミン+コンドロイチン治療グループで有意に炎症が改善されたという解析結果が報告されており、グルコサミンとコンドロイチンの組み合わせの関節炎への効能が支持されています。
これらの関節への効能が示唆されているサプリメントとの組み合わせも検討しながら、長期的に非変性Ⅱ型コラーゲンを摂取すると、関節の痛みや動かしづらさを感じている方にとって効果的だと考えられます。
コンドロイチンは、私たちヒトを含む多くの哺乳類の体の中で、特に皮膚や軟骨を維持するために、細胞同士の接着のサポートや水分保持などの重要な働きをする、糖分子が連なって構成されるムコ多糖という物質の一種です。
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