暑い日や疲れを感じているときに、うなぎを食べると精力を回復できるとよく聞きます。また、日々の生活で疲労やストレスを感じて、なかなか力が出てこないときってありますよね。そんなとき、睡眠や休息をとるのはもちろんですが、普段の食事でスタミナをつける食材をとることも重要です。今回は疲れが取れない方にぴったりの、精のつく食べ物と食材をご紹介します。
精のつく食べ物とは?栄養素に注目
「精」とは、男性の性機能を指すのではなく、「精力」と「精神」という意味です。
精がつくという言葉は、「元気が出る」「活力が増す」などの意味を持ちます。精がつく食べ物とは、食べると元気が出てくる食材であり、含まれる栄養素と深い関係があります。元気が出ず、疲れが取れないときには、精力を回復するために「精がつく食べ物」を多く含む食事が、疲労回復をサポートします。
さて、うなぎが精がつく食べ物の代表とされる理由について疑問を持つ方もいるでしょう。それは、うなぎに含まれる栄養素に関わります。精のつく食べ物を紹介する前に、不足しがちな疲労回復に役立つ栄養素を紹介します。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖をエネルギーへ変換するときに必要な栄養素です。不足すると、身体のだるさや息切れ、食欲不振などの症状がみられます。スタミナアップへの効果が期待でき、ある研究では、ビタミンB1の投与によって運動時間の継続につながり、筋グリコーゲンの回復速度の増加がみられたという報告があります。(1)
ビタミンB2
ビタミンB2はたんぱく質や脂質、糖質のエネルギー代謝をサポートする役割があり、人の成長に関わる「発育のビタミン」とも呼ばれています。特に脂質の代謝に関わり、スタミナの維持に役立ちます。細胞の老化防止にも効果が期待されています。(2)
ビタミンB6
ビタミンB6は主にたんぱく質の代謝に関わる栄養素で、免疫系の維持などに役立ちます。日常的な摂取を心掛けることで、疲労感や倦怠感軽減につながります。(3)精神を安定させる働きを持つセロトニン合成に関わり、(18)メンタルアップにも役立ちます。
ビタミンB12
ビタミンB12は脂肪酸やアミノ酸の代謝に関与し、慢性疲労や体力の低下を引き起こす「巨赤芽球性貧血」の予防に役立ちます。(20)あさりや牡蠣、かつおなどの動物性食品に多く含まれます。
ビタミンC
ビタミンCは皮膚やコラーゲン合成に欠かせない栄養素で、欠乏すると疲労や倦怠感、顔色の悪化、貧血などが症状として現れます。また、抗酸化作用を持ち、ビタミンEと協力して活性酵素を除去、細胞を保護する役割もあります。(4)野菜・果物全般に含まれます。
カルシウム
カルシウムは身体の機能維持や調整に欠かせないミネラルで、筋肉の収縮や神経を安定させる働きがあります。乳製品や小魚、大豆製品などに多く含まれ、ビタミンDと一緒に摂ると、その吸収率が高まります。(5)
亜鉛
亜鉛は約100種類の酵素の触媒活性やたんぱく質及びDHAの合成に関わり、人の健康維持に重要なミネラルです。欠乏すると、男性では性腺の発達障害や機能不全、テストステロンの合成と分泌の低下、食欲不振などを起こします。(6)精をつけたいときは積極的に摂取したい栄養素です。
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鉄
鉄はヘモグロビンや酵素の構成成分で、鉄欠乏性貧血によって集中力低下や頭痛、食欲不振などが起こります。また、筋肉中のミオグロビンが減ると、疲労感や筋力低下などの原因にもなります。動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ると、吸収効率が高まります。(7)
クエン酸
クエン酸はたんぱく質や脂質、糖質を分解・消化しながら、エネルギーを作る栄養素です。不足した場合、エネルギーに変換できなかった成分が乳酸として蓄積され、疲労を感じやすくなります。(8)梅干しやレモン、オレンジなどの柑橘系の果物に含まれます。
アルギニン
アルギニンは成長ホルモンの分泌促進、免疫機能の向上、脂質代謝の促進などに関わるアミノ酸です。勃起不全や性機能改善への有効性が期待されています。(19)精をつけたいときに意識したい栄養素です。
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精のつく食べ物の効果
疲労回復
先ほど紹介したビタミンB群は、摂取した栄養素を効率よくエネルギーに変換する役割を持ちます。逆に摂取不足に陥ると、エネルギーとして使えないことから、疲労感の原因に。(9)つまり、精のつく食べ物を摂ることは、疲労回復につながるのです。
滋養強壮
滋養強壮は、身体の弱い部分を栄養素で補い、体質改善によって強い体づくりが期待できることです。例えば、マカは活力増強、栄養補給に古くから用いられてきた食材で、筋量増加に関わるロイシンやアルギニンなどアミノ酸を含みます。また、骨格筋細胞の生育や成長を促し、筋肥大の作用があるという研究結果もあります。(10)
夏バテ防止
汗はもともと体温を一定に保とうとする働きで、湿度が高いと体内に熱がこもり、自律神経の乱れが起こります。それによる食欲不振や消化機能の低下、睡眠不足などにより、疲労がたまると「夏バテ」になります。ビタミン、ミネラル、クエン酸を含む食材をとることは、疲労の原因となる乳酸が排出できます。(11)
精のつく食べ物8選
うなぎ
精がつくと言われる代表的な食材です。疲労回復に役立つビタミンB1群やビタミンAや脂溶性ビタミン、テストステロン合成や男性の性機能に関わるなど、ほかにも亜鉛や鉄、カルシウムなどをバランスよく含んだ、元気をつけたいときにぴったりな食材です。
豚肉
疲労回復に効果が期待できるビタミンB群、および身体を作るたんぱく質とを含む食材です。特にビタミンB1 を豊富に含み、糖質の代謝をサポートします。また、ニンニクやニラ、ねぎなどのアリシンを含む食材と食べると、吸収率を高めてくれます。
牡蠣
男性の性機能維持に役立つ亜鉛や、体力維持に関わるビタミンB12をたっぷりと含み、たんぱく質、鉄などの栄養補給にも優れた食材です。
あさり
カルシウムやカリウム、亜鉛、鉄などのミネラルを豊富に含み、ビタミンB12の含有量は貝の中でもトップクラス。加熱したときの煮汁にも旨味や栄養素が多く含まれるため、煮汁ごと食べるのがおすすめです。(12)
青魚(さば、まぐろ、かつおなど)
青魚は身体を作るたんぱく質や集中力アップにつながる鉄、疲労回復を助けるビタミンB2、B6、B12、血液の働きをサポートするタウリンなどを豊富に含みます。(13)これらを効率よく摂取するには、生食や汁ごと食べるのがよいと言われています。
卵
昔から滋養強壮があると言われる食材です。良質なたんぱく源であり、ビタミンCと食物繊維以外の全ての栄養素を含むため、「完全栄養食品」と呼ばれます。ビタミンB2、B12、D、鉄や亜鉛、セレンなどを豊富に含み(14)、たんぱく質、脂質の代謝を円滑に行ってくれます。
山芋
滋養強壮の食材として知られ、長芋や大和芋も含みます。炭水化物やカリウム、ビタミンB1、食物繊維などを豊富に含み、生食が可能で、暑い日にごはんや蕎麦などにかけてさっぱりと食べられるのが魅力です。ザクザクと切って和え物にして食べてもおいしいです。(15)
マカ
マカはペルーのアンデス山地原産の野菜で、根はスープや発酵飲料に用いられてきました。ペルーの健康な成人男性を対象にした、二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、マカエキス1.5gまたは3gを12週間摂取したところ、性ホルモンの上昇が認められたという研究結果があります。(16)
精のつくスタミナ料理レシピ
ここから上記の食材を使った、精のつくスタミナ料理レシピをご紹介します。
豚バラ肉とかぼちゃのスタミナ炒め
ビタミンB1を豊富に含む豚肉とその吸収力を高めるアリシンを含む、ニンニクを加えた炒め物です。豚バラ肉をごま油で炒め、かぼちゃは5㎜幅に切って600Wで約3分加熱したあと、豚肉と一緒に炒めて、5cm幅に切ったさやいんげん、めんつゆ、砂糖、ニンニクを入れて味がなじむまで炒めたら完成です。
牡蠣のレモンバターソテー
亜鉛をたっぷりと含んだ牡蠣で作る、簡単メニューです。クエン酸を含むレモン汁の酸味を効かせているのがポイントです。牡蠣は片栗粉をまぶして汚れを洗い流した後、水をふき取って塩こしょうと小麦粉を軽くまぶし、オリーブオイルで両面を1分半ずつ焼きます。最後にバターとレモン汁を絡めて仕上げます。10分ほどで作れるのでぜひお試しください。
かつおのたたき
かつおはたんぱく質、DHA・EPAなどをバランスよく含み、それらの代謝を円滑にするビタミンB2、B6も含みます。鉄やビタミンB12もとれるため、貧血予防にもおすすめです。サラダ油をひいて、かつおの柵の表面を焼き色がつくまで焼いた後、氷水にとって水気をふき取り、1㎝の厚さに切ります。薄切りにした玉ねぎにかつおをのせ、ねぎやすりおろしたニンニク、ポン酢をかけて完成です。薬味をたっぷりのせて、吸収効率を高めてみましょう。
精力を上げるための食事のコツ
精力を上げるための食事のコツは、ビタミンB群や鉄、亜鉛などのミネラル、クエン酸などをバランスよくとることです。これらの栄養素は貯蔵ができず、多く摂取しても余剰分は尿として排出されてしまいます。そのため、持続的な摂取を心掛けましょう。また、食欲アップには生姜や大葉、梅干しの酸味や風味を活かしたメニューのほかに、カレー粉やこしょうなどの香辛料を使った料理もおすすめです。(17)
まとめ
精がつく食べ物は、ビタミンやミネラル、たんぱく質、脂質などをバランスよく含む食材です。糖質、脂質、たんぱく質を効率よくエネルギーに変換し、身体を構成する物質や生理機能調整に役立つ形に変えることが、結果的に身体を動かす力(=スタミナ)となります。健康な食生活を起点に、精がつく食材を取り入れて、疲れ知らずな体を作っていきましょう。