成分ガイド

乳酸菌の成分情報:腸に良くて効果的な摂取方法【薬剤師が解説】

監修者 木村 彩香 薬剤師 公開日:2024-08-08 最終更新日:2025-07-21

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乳酸菌の成分情報:腸に良くて効果的な摂取方法【薬剤師が解説】

監修者木村 彩香 薬剤師 公開日:2024-08-08 最終更新日:2025-07-21

テレビなどでよく聞く乳酸菌。体にいいことは知っていても、なぜ体にいいのか、どのように摂取すればいいのかを知らない人が多いのではないでしょうか?

乳酸菌は悪玉菌が増えることを抑制して、腸内環境を整える働きがある微生物のことをいいます。(1)

腸内環境が整うと便通が改善するだけでなく、免疫力が向上したり、アレルギー症状が緩和したり、コレステロール値が下がったり、メリットがたくさんあります。

最近ではメタボリックシンドロームに対しても乳酸菌がいいのではないか、と研究が進められています。(3)

本記事では、乳酸菌のもたらす効果や乳酸菌が含まれるおすすめの食品を紹介します。乳酸菌をうまく取り入れて、健康な毎日を送りましょう!

乳酸菌とは?善玉菌ですか?

乳酸菌とは?善玉菌ですか

乳酸菌とは、ヒトの腸内に住んでいる「善玉菌」の一種です

ヒトの腸内には約1000種類、100兆個の細菌が住んでいます。

その中で、乳酸菌はおよそ20〜30種類が確認されており、腸内細菌全体の中では比較的少数派ですが、その機能性の高さから注目されています

乳酸菌とは、広義には糖を代謝して乳酸を産生する微生物の総称であり、主にラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)などが含まれます。

一方で、狭義には、ラクトバチルス属やストレプトコッカス属など「乳酸菌科」に分類される菌種のみを指す場合もあり、文献や研究領域によってその定義はやや異なる点に注意が必要です。

菌の種類は「善玉菌」、「悪玉菌」、どちらでもない菌の3種類があります。悪玉菌が悪者と考えられがちですが、悪玉菌そのものよりも腸内に存在する菌のバランスを保つことがとても大切です。(2)

悪玉菌は偏った食生活やストレス、睡眠不足などで増えて、便秘などの体調不良を引き起こします。
 

腸内環境のバランスを守る善玉菌・乳酸菌

一方で、善玉菌は腸内環境(腸内フローラ)を整える働きがあります。健康的な食事と睡眠、ストレスの少ない生活を送ると腸内バランスは保てます。

しかし、現代の人々は仕事や家事、育児などでストレスも多く、睡眠不足の人も多いでしょう。

忙しいとついつい外食が増えて、栄養バランスが偏ることも。そんなときに、乳酸菌の摂取がおすすめです。

医学の父ヒポクラテスは「すべての病気は腸から始まる」という格言を残しているほど、腸内環境(腸内フローラと呼ばれます)と病気は密接な関わりがあります。

腸内環境を整えることは、とても大事です。乳酸菌は手軽に摂取できるので、腸内環境を整えるために試してみてはいかがでしょうか
 

乳酸菌の働きと体内での役割

乳酸菌は、糖をエサにして乳酸を作り出す菌で、腸の中ではとても大切な役割を担っています

乳酸が作られることで腸内が少し酸性に傾き、悪玉菌が増えにくい環境になります。これにより、腸内環境が整い、便通がスムーズになるだけでなく、免疫バランスにも良い影響を与えるといわれています

2024年に発表された研究では、健康な人の腸内から新しく分離された乳酸菌と、それらを組み合わせたコンソーシアム(LABCON)が、悪玉菌である大腸菌や黄色ブドウ球菌に対して、抗菌作用やバイオフィルム形成の抑制効果を示すことが報告されました。

この結果は、従来知られている「乳酸菌が腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑える」働きに加えて、乳酸菌が作り出す物質が直接的に病原菌に影響を与えるという、新しい作用メカニズムの可能性を示しています。(7)
 

体内分布

また、乳酸菌は小腸や大腸を中心に分布していますが、種類によっては口の中や胃、膣などにもすんでいます。

たとえば、ビフィズス菌は主に大腸、ラクトバチルス菌(乳酸桿菌)は小腸や膣でよく見られます

ただ、これらの菌は体に住みつくというよりは、一時的に通過して働いてくれるものが多いため、毎日こまめに摂ることがポイントになります。

腸内に乳酸菌がしっかり働いていると、便秘や下痢の予防だけでなく、体全体の調子が整いやすくなることがわかってきています。

腸の健康が気になる方は、乳酸菌をうまく取り入れてみるとよいでしょう

 

乳酸菌の種類

乳酸菌といっても実は種類はさまざま。それぞれに特徴があり、働き方や期待できる効果も少しずつ違います。

 

1. ラクトバチルス菌

ラクトバチルスは「狭義の乳酸菌」に含まれる菌で、ヨーグルトや乳酸菌飲料などによく使われています。

胃や小腸にすみつくタイプが多いです。。

代表例としては、カゼイ菌やアシドフィルス菌などが挙げられます。

 

2. ビフィズス菌

実はビフィズス菌は、厳密には「乳酸菌」とは異なる分類になります。ただし、腸内で乳酸や酢酸などを作り出し、腸内環境を整えるという点で、広い意味では乳酸菌の一種とされています。

主に大腸にすみつき、便通の改善や免疫力アップなどの作用が知られています。

 

3. ラクトコッカス菌

チーズや発酵乳の製造に使われる菌で、食品発酵の現場ではおなじみです。

腸内に長くとどまるタイプではありませんが、腸内の善玉菌をサポートする「一時的な働き菌」として注目されています。

 

4. サーモフィルス菌

ヨーグルトのパッケージなどでよく見かける、「サーモフィルス菌」という名前が一般的です。

ストレプトコッカス属に属する菌で、乳酸を産生することで腸内のpHバランスを整え、悪玉菌の増殖を防ぎます。

 

乳酸菌には「植物性」「動物性」がある?

乳酸菌は、どの環境や食品から見つかったかによって、「植物性」「動物性」などの呼び方で分類されることがあります。これは菌そのものの性質ではなく、“由来”に基づく分類です。

 

植物性乳酸菌

キムチ

植物性乳酸菌は、漬物、味噌、キムチ、酒粕などの植物性発酵食品から分離された乳酸菌です。

これらの食品の自然発酵の過程で育つ菌で、日本の伝統食品にも多く含まれています。

 

動物性乳酸菌

ヨーグルト

動物性乳酸菌は、牛乳やチーズ、ヨーグルトなど、動物由来の乳製品の発酵に使われる乳酸菌です。

ラクトバチルス属やストレプトコッカス属などがこれにあたり、乳を栄養源として増殖します。

 

人体由来の乳酸菌って何?

ちなみに、「人体由来の乳酸菌」という言葉を見かけることもありますが、これは人の腸や母乳などから分離された乳酸菌を指します。「ヒトの体との相性が良い」として研究・商品化されていることがあります。

 

乳酸菌の健康作用

乳酸菌の健康作用

乳酸菌の健康作用と聞いて、どういったものを思い浮かべますか?

 

腸内環境の改善効果

乳酸菌の健康作用と聞いて、まず思い浮かぶのが「腸内環境の改善効果」ではないでしょうか。便秘にも下痢にも働きが期待でき、便通に関するあらゆる悩みを改善してくれる働きがあります。

 

免疫力の向上

乳酸菌には、免疫力の向上も期待されています。腸内環境を整えることで、体全体のバランスが良くなり、風邪などの感染症への抵抗力を高めてくれることが知られています。(2)

 

アレルギー症状の緩和

アレルギー症状の緩和も、乳酸菌の注目される効果のひとつです。特に花粉症やアトピー性皮膚炎など、免疫の過剰反応が関わる症状に対して、腸内環境の改善が一助となる可能性があります。

 

血圧やコレステロール値の改善

乳酸菌の摂取により、血圧の安定やコレステロール値の改善も報告されています。生活習慣が気になる方にとって、乳酸菌は日々の健康維持に役立つサポートとなるでしょう。

 

抗腫瘍効果

一部の乳酸菌には、抗腫瘍効果もあるとされています。

まだ研究段階ではありますが、体内の環境を整えることで、病気に対する抵抗力を高めることが期待されています。

 

肥満への効果(腸内フローラとの関係)

最近では、肥満の方は腸内フローラが乱れていることがわかってきており、乳酸菌による肥満への効果も研究が進められています。(3)

 

便通に問題がなくても、乳酸菌は健康のために摂取して損はないでしょう。

※基礎疾患がある人は、医療機関に通ってしっかり医師に診てもらうことが大事です。乳酸菌は病気の治療ではなく、あくまでサポートとして摂取するという認識でいましょう


   

乳酸菌の含有食品は?

ヨーグルト

乳酸菌を含む食べ物と聞いて、思い浮かぶものは何がありますか?ヨーグルトやチーズ、納豆、キムチ、味噌などの発酵食品には乳酸菌がたくさん含まれています。

毎日発酵食品を食べるように心がけるとよいでしょう。

端場 愛管理栄養士がまとめた、腸内の乳酸菌や善玉菌を増やすのに有効な食品は、主に10種類あります。こちらの記事をご参考に:腸活食材!善玉菌を増やす食べ物10選ランキング!腸内環境を整えて健康維持に役立てよう

食べ物から摂取することが難しい場合は、乳酸菌飲料を飲んでもよいです。

ただし、いくつか注意があります。乳酸菌飲料でも甘いものは砂糖が多く含まれており、飲みすぎると糖尿病や肥満の原因になります。

できるだけカロリーが低いものや砂糖不使用のものを選びましょう。また、たまに乳酸菌飲料が好きだからと何本も飲まれる方がいますが、何本も飲むとカロリーが高くなります。

1日に飲む量は1本程度に抑えておきましょう。

カロリーや糖分が気になる方は、乳酸菌飲料よりもサプリメントで摂取することを推奨します。

どこでも手軽に摂取できて、外出や旅行にも持っていきやすいですよ。
関連記事:腸活食材!善玉菌を増やす食べ物10選ランキング!腸内環境を整えて健康維持に役立てよう
 

 

乳酸菌とプロバイオティクスの違い?

プロバイオティクスとは、フラー博士(1989)により「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されています。(5)

プロバイオティクスには「安全性が保証されていること」「もともと腸内に存在していること」などの条件がありますが、一番の特徴は「生きたまま腸に到達できること」です。

乳酸菌もプロバイオティクスの中の一種です。ただし、乳酸菌は生きたまま腸に到達できるものとできないものがあり、そこがプロバイオティクスとの大きな違いになります(6)

プロバイオティクスは、便秘・下痢の改善や免疫機能の活性化、動脈硬化予防、アレルギーの抑制などの効果があります。

また、最近では肥満・生活習慣病と密接な関係があることもわかってきて、プロバイオティクスの効果については現在も研究が続けられています。(6)

最近では、プロバイオティクスのサプリもドラッグストアで出てくるようになりました。

日本よりも健康志向・予防意識が高い欧米では以前からプロバイオティクスに注目が集まっており、今後日本でもさらに人気が出ると予想しています。 

関連記事:  

乳酸菌は加熱処理しても効能がありますか?

乳酸菌は口から摂取すると、強力な酸が含まれる胃を通過して、腸まで到達しなければなりません。

しかし、一部の乳酸菌は胃酸や胆汁酸によって死滅してしまいます。(死滅せずに腸まで届く乳酸菌もいます。)また、事前に乳酸菌を加熱処理し、原材料となるサプリメントもよく見かけます。

加熱処理、死滅してしまった菌に、健康効果はあると思いますか?答えは「死滅した菌でも健康効果があります」。(4)

研究によると、生菌と死菌の両方に健康効果があることがわかっています

生菌は腸内で増殖して、乳酸や酪酸をつくり、善玉菌を増やす働きがあります。一方で、死菌には菌体そのものや菌体外に放出された生産物に、健康によい成分が含まれることがわかっています。

死菌は、血圧やコレステロール値を下げる効果があります

 

まとめ

乳酸菌のまとめ

今回は乳酸菌を紹介しました。

腸内環境を整えることは便通改善だけでなく、免疫機能の向上・アレルギー症状の緩和・コレステロール値の低下などに役立ちます。よく風邪をひく虚弱体質の人、花粉やハウスダスト等に敏感なアレルギー体質の人など、病気とまではいかなくてもどこか不調を感じたら、腸内細菌に注目してみましょう。

意外と腸内が荒れているから、不調が出ているのかもしれませんよ。

また、摂取方法はヨーグルトや納豆、キムチ、チーズなどの発酵食品を食事で摂るようにしましょう。

発酵食品を食べる習慣が身につけば、便秘や下痢の改善も期待できます。食事で摂取が難しい人は、乳酸菌飲料やプロバイオティクスのサプリを試してみてもいいかもしれません。

乳酸菌を使った健康対策は、誰でも簡単に続けることができます。ぜひ、今日から試してみてくださいね。

参考資料:
  1. 乳酸菌」/ 厚生労働省
  2. 腸内細菌と健康」 / 厚生労働省
  3. プロバイオティクス細菌による血中脂質改善作用」/ 腸内細菌学雑誌24 : 281–286,2010
  4. 殺菌された乳酸菌の働き」/ 生物工学会誌 第97巻 第7号
  5. 「プロバイオティクス」って何?」/ ヤクルト中央研究所
  6. プロバイオティクス」/ 公益財団法人 腸内細菌学会