最近、京都大学の研究で、DHAやEPAを含むフィッシュオイルを摂取すると脂肪を燃焼する細胞(褐色脂肪細胞やベージュ細胞と呼ばれます)が増加して、体脂肪が燃焼されることが明らかになりました(1)。
欧米人より日本人に痩せ型が多いのは、日本の食生活が痩せやすいからと言われていますが、欧米より魚を食べる機会が多いことも理由のひとつかもしれません。
また、以前からDHAやEPAは記憶力や認知機能、血流改善に役立つと言われています。魚を食べると頭が良くなると言われるのも、このDHAやEPAが多く入っているためです。
今回は、魚に多く含まれるDHA・EPAとダイエットの関係について紹介していきます。
DHA、EPAの基本

DHAとEPAは必須脂肪酸
そもそも、DHAやEPAって何でしょう?サプリメントや広告でよく見かける言葉なので、「魚の成分のひとつ」となんとなく認識されている方も多いでしょう。
DHAはドコサヘキサエン酸、EPAはエイコサペンタエン酸の略語で、どちらもオメガ3系脂肪酸であり、必須脂肪酸の一種です。
DHAもEPAもヒトは体内で合成できません。そのため、食事やサプリメントから摂取が必要なのです。サバやサンマ、マグロなどの青魚や魚油に多く含まれます。
DHAやEPAの働き
ヒトの体は細胞からできています。細胞は、リン脂質が二重に重なった膜で囲まれています。DHAやEPAは、そのリン脂質を構成するひとつです。
以前の研究で、DHAの欠損した細胞膜のマウスでは視覚と生殖機能が失われていることが報告されています(2)。
つまり、この研究から少なくとも視覚や生殖機能には、DHAが必要であることがわかります。
また、DHAやEPA、魚油は認知症リスクを下げることも多くの動物実験や疫学研究で報告されています(3)。
現在、認知症の薬は数多く発売されていますが、病気の進行を遅らせるだけで認知機能を改善することは難しいです。また、薬剤費用も高額なものが多い印象です。
そのため薬での治療を期待するよりは、認知症の予防のために魚を食べたり、DHA・EPA摂取を心がけたりすることの方が、手軽で有効だと考えます。
DHAやEPAの働きについては未解明のことも多いですが、視覚や生殖機能、認知機能のみならず、ヒトの体に多くの影響を与えていることは間違いないでしょう。
参考:DHA成分情報:働き、副作用と摂取方法【医師監修】
DHA、EPAサプリメントを飲んだら痩せる?

最近話題になっているDHA・EPAサプリメントを飲んだら痩せるのか?ということですが、現時点でははっきりとした答え(研究結果)はでていません。
というのも、効果がある・効果がないの両方の研究結果がでているからです。
効果があるという研究では、30人の被験者に対して行った実験で、オメガ3脂肪酸サプリメントを投与したグループは何も投与していなかったグループよりも減量できたとの報告があります(4)。
また、マウスを使った実験でも、魚油を与えたマウスは与えられなかったマウスよりも体重増加が有意に少なかったという報告もあります(5)。
一方でDHA・EPAサプリメントや魚油を摂取しても、何も摂取しないグループと差異がなかったという報告もあります。
現時点では、DHA・EPAとダイエットの関係について判明していないことが多く、はっきりとダイエットに効果的であるということはいえません。
DHAやEPAは健康にいいことはわかっているので、食事や運動を中心としたダイエットの補助として使うのがよいでしょう。
DHA、EPAサプリメントの使用とダイエットの方法
DHA・EPAサプリメントを活用したダイエット方法を紹介します。
ダイエットは食事と運動の見直しから始める
ダイエットだけでなく、病気や健康のためを考えている患者さん全員にお伝えしていることですが、一番大切なのは「食事と運動の習慣を整えること」です。毎日欠かさず薬やサプリメントを飲むことではありません。
それくらい食事と運動は大切であり、偏った食事や運動習慣がない人はそこから見直してみましょう。
食事

食事は、まずファーストフードやお菓子類をやめるところから始めましょう。普段ハンバーガーやお菓子をよく食べる人であれば、
これだけで数キロ痩せることもあります。そのうえで、ご飯のメインは肉から魚に変えるように意識してみてください。週4で魚を食べることが理想ですが、無理なくできる範囲で構いません。
運動

運動は、10分間のウォーキングから始めてみてください。1週間歩いてみると体がだんだん歩くことに慣れてきます。
こうなったら、15分、20分、30分と歩く時間を延ばしていきましょう。続けるコツは毎日決まった時間に歩くことです。
そして、一度歩くと決めたら、何が何でも歩きましょう。たった1日でもサボると続かないので注意してください。
食事と運動を見直したら、サプリメントの活用をはじめよう
食事と運動の見直しができていて、さらにプラスでダイエットや健康にいいことを始めたい場合は、DHA・EPAサプリメントをおすすめします。
この記事を読んでダイエットを考えてる人は、「運動が嫌い」「お菓子や甘いものが好き」という人も少なくないのではないでしょうか。
そういった方はコレステロール値が悪い傾向にあります。DHA・EPAはコレステロール値にもいいことがわかっています。コレステロール値が気になる人もぜひ検討してみてください。
サプリメントには、薬ほど細かいルールがありません。 パッケージに表記されている一日量を守って飲むようにしましょう。
また、サプリメントは薬と違って、病気を治すことはできません。バランスの取れた食事と適度な運動を基本に、サプリメントはあくまで補助目的で続けることが重要です。
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DHAとEPAが多い食品とダイエットにおすすめな食事
DHAとEPAが多く含まれており、ダイエットに適した食品を紹介します。
DHA・EPAを多く含むのはやっぱり「青魚」

DHAやEPAを多く含むのはやはり魚です。野菜や油にはほとんど含まれません。一部の豚肉や鶏肉には少量含まれていますが、魚の含有量に比べると足元にも及びません。
食品成分データベースによると、EPAを多く含む食品は以下の通りです。
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たらの油(13000mg)
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鯨の皮(4300mg)
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あんこうの肝(3000mg)など。
DHAを多く含む食品は以下の通りです。
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たらの油(6200mg)
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あんこうの肝(5100mg)
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マグロの脂身(4000mg)など。(6)
とはいっても、普段からたらの油や鯨、あんこうを食べるのは現実的ではないので、身近な食品を紹介します。
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日常に取り入れやすい食事メニュー
おすすめなのは、魚のサバ缶やイワシ缶などの缶詰類です。缶詰なら一人暮らしでも調理の手間が少ないです。
また、日持ちもしますので、家にストックしておいてもよいでしょう。サバ缶やイワシ缶はパスタやうどんなどの麺類とも相性が良く、手軽に美味しくDHA・EPAを摂れます。
余裕があれば、さんまや鯖の焼き魚もおすすめです。魚を焼くのは面倒臭いと思いがちですが、肉料理と違って焼き魚は塩のみで味付けができます。
料理が苦手な人ほど、焼き魚をルーティンメニューに取り入れてみてはいかがでしょう。
まとめ
今回はDHA・EPAとダイエットに関する紹介でした。DHAやEPAが直接ダイエットに効果的かどうかはわからない部分が多いですが、コレステロール値などにプラスの影響をもたらすことは以前からわかっています。
魚料理を中心とした食事や適度な運動を組み合わせたダイエットをしつつ、DHA・EPAをとり入れて健康的で自分らしい生活を手に入れましょう。