DHAはオメガ3脂肪酸の一種で、「脳の栄養」と呼ばれ、認知機能の維持に欠かせない必須脂肪酸です。
しかし、DHAの働きはそれだけではありません。DHAは、中性脂肪の低減、心臓病の予防や妊婦の健康、肌の老化防止にも重要な役割を果たしています。
最近の研究結果をもとに、DHAの基礎知識、働きと正しい摂取方法について詳しく解説します。
DHAとは

DHA(ドコサヘキサエン酸)は、「脳と目の健康を支えるオメガ3脂肪酸」として知られており、考える力や視力、記憶力の維持に欠かせない重要な栄養素です。
脳の乾燥重量の約30~55%が脂質で構成されており、そのうち約11%をDHAが占めていることからも、DHAが脳にとって極めて重要な存在であることがわかります。DHAは人の細胞膜、特に脳の灰白質、神経組織、眼や網膜などに多く存在し、神経伝達をスムーズにし、感覚や知性を保つ役割を担っています。
そのため、DHAは妊娠期、胎児の発展や、人の脳、目、心臓の健康に深く関わる栄養素です。また、DHAはサバやマグロなどの青魚に豊富に含まれていますが、体内でほとんど合成できないため、食事などからの積極的な摂取が必要な「必須脂肪酸」として位置づけられています。
日々の食事やサプリメントを通じてDHAを適切に摂取することで、全身の健康維持に役立ちます。
DHAの5つの効果|脳・心臓・妊娠・記憶力にも役立つ
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、オメガ3脂肪酸の一種で、お体に多くの重要な働きを持っています。代表的なDHAの働きは脳の神経伝達を促進し、記憶力や認知機能の維持に貢献します。
特に、年齢とともに低下する脳機能の改善や維持に役立つとされています。(4)(5)
1. 脳機能・集中力の維持

DHAは神経細胞の働きを助け、記憶力や認知機能を維持します。とくに胎児期から幼児期の脳の発達にも不可欠とされています。DHAは集中力の維持や改善にも関与しており、仕事や学習のパフォーマンス向上に役立つことが示されています(23)。
2. 心血管の健康

DHAは心血管にも良い影響を与えます。中性脂肪やコレステロールのバランスを調整し、血流の改善に寄与するため、動脈硬化や高血圧の予防にも有効です(13)。
心臓病のリスクを減らし、特に血圧の過度な上昇やや血液の凝固を防ぐ働きがあるとされています。
3. 妊婦や赤ちゃんの健康

妊婦や赤ちゃんの健康においてもDHAは重要です。妊娠中のDHA摂取は胎児の脳や神経の発達をサポートし、早産リスクの低下や免疫力の向上にもつながることが報告されています。
また、妊娠中にDHAを摂取することで、母体の健康維持をサポートし、赤ちゃんの免疫機能や発育を促進します。(10)(25)(26)
4. 抗炎症

DHAは抗炎症作用を持ち、炎症性疾患の予防や改善にサポートできるとされています。(24)
1日のDHA摂取推奨量

DHAは体内で十分に合成することができず、不足すると皮膚炎などの症状を引き起こします。そのため必須脂肪酸であり、食事からしっかり摂取する必要があります。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(厚生労働省)には、DHA・EPA・α-リノレン酸などのオメガ3脂肪酸の推奨摂取量が定められています(表1)。
性別・年齢に応じて変化しますが、オメガ3(DHAを含める)の推奨摂取量成人男性では2.2~2.3g程度、成人女性は1.7~2.0g程度の摂取が推奨されています。食事からは、他の種類のオメガ3脂肪酸(EPAやα-リノレン酸)も摂取できますので、DHAの摂取量は1日あたり約1g程度で十分です。
表1:オメガ3脂肪酸の摂取目安量(『日本人の食事摂取基準(2025年版)』(厚生労働省)より)
年齢 |
男性(g) |
女性(g) |
1~2歳 |
0.7 |
0.7 |
3~5歳 |
1.2 |
1.0 |
6~7歳 |
1.4 |
1.2 |
8~9歳 |
1.5 |
1.4 |
10~11歳 |
1.6 |
1.7 |
12~14歳 |
2.2 |
1.7 |
15~17歳 |
2.2 |
1.7 |
18~29歳 |
2.2 |
1.7 |
30~49歳 |
2.2 |
1.7 |
50~64歳 |
2.3 |
1.9 |
65~74歳 |
2.3 |
2.0 |
75歳以上 |
2.3 |
2.0 |
妊婦 |
- |
1.7 |
授乳婦 |
1.7 |
DHAの摂取タイミング・方法
DHAは主に青魚に多く含まれています。肉類にも含まれてはいますが、その量は魚に比べると微々たるものです。
効果的にDHAを摂取したい人は1日の食事に魚を取り入れると良いでしょう。
青魚の種類は?青魚の栄養素とメリットをご紹介
DHAが多い食品ランキング

順番 |
食品(100gあたり) |
DHA(mg) |
1 |
まぐろ |
4,000 |
2 |
さば |
2,600 |
3 |
さんま |
2,200 |
4 |
ぶり |
1,700 |
5 |
うなぎ |
1,300 |
6 |
さけ |
1,100 |
7 |
いわし |
980 |
8 |
卵黄 |
230 |
9 |
牛肉 |
87 |
10 |
豚肉 |
61 |
毎日魚を食事に取り入れるのが一番理想ですが、魚の調理には手間がかかるものです。さらに、焼くと2割程度、揚げる場合は6~7割もDHAなどの栄養素の摂取量が減少してしまいます。
コスト面を考えても、手軽に食べられるサバの缶詰を利用する場合で1缶あたり200~300円することも多く、毎月の食費負担が増える可能性もあります。
そこで、毎日食事からの摂取は難しいという方は、コスト面からもサプリメントを活用するのがおすすめです。
魚が好きな方におすすめ:
青魚の種類は?青魚の栄養素とメリットをご紹介
オメガ3脂肪酸が多い食品ランキング10選!たっぷりオメガ3を食べましょう
DHAの副作用と薬の相互作用
DHAの摂取は一般的に安全とされていますが、過剰摂取は出血傾向を高める可能性があります。
また、特定の医薬品との相互作用が報告されているため、既存の健康問題がある場合や薬を服用している場合は、医師に相談することが推奨されます。
DHAを飲むベストなタイミング
DHAはオメガ3脂肪酸の一種なので、「油(オイル)」のようなものとして考えるとわかりやすいです。体内で吸収されるには、消化酵素による分解が必要です。食事中には体内で消化酵素が分泌されるため、DHAのサプリメントや製品は、食事と一緒に摂ることで吸収が良くなると言われています。
特に脂肪分を含む食事と一緒に摂取すると、脂溶性であるオメガ3脂肪酸の吸収がよりスムーズになります。また、毎日同じ時間に摂ることで、体内のDHAレベルを安定させることができます。
DHAの認知度が高まり
DHAの健康への影響については、数十年にわたる研究を通じて徐々に明らかになってきました。
DHAは20世紀に発見され、その重要性が認識されるようになり、2000年代にはその構造や機能が具体的に解明されました。
その後、DHAを含む健康食品の開発が進み、市場にはさまざまな製品が登場しました。研究の進展とともに、健康意識の高まりを受けて、DHAを含むサプリメントの需要は急増しています。
実際、2022年の市場規模は約17億ドルに達し、2030年には約30億ドルに成長すると予測されています。
今後も新しい研究が進むことで、DHAの重要性はさらに認識されることが期待されています。
DHAを摂取して健康的な生活を送る
本記事では、DHAという必須脂肪酸について、その効果と摂取方法を詳しく解説してきました。
DHAは私たちの健康を支える上で欠かすことのできない重要な栄養素であり、脳の認知機能や心臓の健康、妊婦の発達、肌の老化防止など、さまざまな面で効果が期待できます。
DHAを効率的に摂取するには、まぐろ、さば、さんまなどの青魚を食事に積極的に取り入れることが理想的ですが、日々の食事で十分な量を摂取するのが難しいという方は、サプリメントを上手に活用することをおすすめします。
成人男性では1日2.2~2.3g、女性では1.7~2.0g程度の摂取が推奨されており、食事のタイミングと合わせて摂ると吸収率が高まります。
自分の健康は自分で守るという意識を持ち、DHAを積極的に取り入れることが大切です。
今日からDHAを上手に摂取して、健やかで充実した毎日を送りましょう。あなたの健康的な生活習慣が、より豊かで満たされた人生につながるはずです。
参考:
オメガ3の11つの効果・働きと手軽に摂取する方法|認知機能・心血管系の健康を支える
必須脂肪酸とは?種類と多く含まれる食品
よくある質問:DHAとEPAの違いは?
DHAとEPAは、どちらもオメガ3脂肪酸で、主にフィッシュオイルに含まれています。DHAは主に脳や目の健康に重要で、認知機能や視力の維持に役立ちます。
EPAは心血管の健康をサポートし、血液をサラサラにする働きがあります。
参考:青魚からのDHA・EPAの効果は?DHAとEPAの違いも解説