DHAは脳を活性化して記憶力や認知力を高める働きがあるとされており、脳の健康に深い影響を与える栄養素として注目されています。
記憶力や認知機能の向上に加え、高齢者の認知症予防や胎児・子どもの脳発達にも重要な役割を果たすことが明らかになっています。本記事では、DHAが脳に与える具体的な効果と、その摂取の意義について詳しく探っていきます。
DHAの働きと脳の関連性について
DHAとはどのような栄養素なのか、そして脳とどのような関連性があるのでしょうか。ここでは、DHAの概要と脳への影響について詳しく解説します。
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DHAは必須脂肪酸の1つ
DHAとは、「ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic Acid)」の略称で、脂肪酸(n-3系)の1種です。
DHAは人体にとって必須の栄養素ですが、体内ではほとんど生成できません。そのためDHAは食事やサプリメントなど、外部から摂取する必要があり、必須脂肪酸に属しています。
DHAにはさまざまな役割があり、とくに脳にとって重要な栄養素といえます。その理由として、DHAは脳の主要な構成成分だからです。実際に、DHAは脳にある不飽和脂肪酸の約60%を占めているとされています(1)。
また、脳の発達や維持にも重要な役割を果たしており、とくに胎児期から幼児期の脳の成長に不可欠とされています。このように、DHAは単なる脂肪酸ではなく、脳の健康に直接的な影響を与える重要な栄養素の一つなのです。
オメガ3脂肪酸は、私たちヒトの身体を作る細胞の細胞膜を形成する物質で、特に脳細胞など神経伝達に関わる部分に多く含まれることが知られています。
参考:オメガ3とは?オメガ3脂肪酸の8つ効果一覧【医師監修】
必須脂肪酸とは?種類と多く含まれる食品
DHAによる脳への影響
DHAは脳のネットワークを円滑にする重要な役割を果たしており、さまざまな影響を与えることが研究でわかっています。
具体的には、ネットワークを作っている「神経細胞」の働きを活性化させ、情報処理をはじめとした脳機能の向上が期待できるのです。
詳細は後述しますが、DHAは記憶にも好影響を与えるとされています。
脳内の「海馬」と呼ばれる部位は記憶の形成に関与しており、DHAはその機能を向上させる可能性があります。
ただしDHAの効果は個人差があり、摂取量や期間によっても変化するので、すべての方に当てはまるわけではありません。
DHAは脳の記憶力と認知機能の向上の事実は
前述したようにDHAは、脳機能にとってよい効果があるとされています。ここでは、脳機能にどのような好影響があるのかについて、さらに深掘りしていきましょう。
DHAは記憶力にサポートが期待できる
DHAは記憶力の向上が期待でき、短期記憶と長期記憶の両方によい影響を与えることが示されています(1)。
実際に、多くの研究でDHAを含めたオメガ3脂肪酸を取り入れた結果、記憶力の改善効果がみられたことがわかっています。
DHAが記憶力を向上させる理由としては、以下のとおりです。
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脳細胞の保護
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神経ネットワークの活性化
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神経同士のやり取りの強化(脳神経間の情報伝達機能)
さらに、DHAは記憶だけでなく学習能力や集中力の向上にも関連しています。
そのため、DHAを積極的に摂取することで、勉強や仕事の効率化が期待できるでしょう。このように、DHAは日常生活を送るうえで必要な記憶力や認知機能の向上に貢献する栄養素といえます。
高齢者の認知機能の維持につながる
DHAは脳の情報伝達機能をサポートすることとされています。DHAは記憶力の向上につながる点から、高齢者の認知機能の維持という役割も果たしているとされています。
実際に、DHAを摂取する頻度が多い方ほど、アルツハイマー型認知症の発症リスクが低くなりやすいという研究報告があります(1)。
とくに高齢者になると脳機能が衰え、認知症の発症リスクは徐々に高まるので、予防するにはDHAの摂取が重要といえるでしょう。
DHAの効果は個人差が大きいため、誰もが認知症の完全な予防につながるわけではありません。
しかし、DHAを含む栄養素を意識的に摂ることが、健康的な生活を送るための1つの要素となるのです。
運動機能の向上にもつながる
DHAは脳機能だけでなく、運動機能の向上にも関係しているとされています。とくに、以下のような面でDHAが注目されています。
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持久力
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反応速度
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集中力
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筋肉量の増加
実際にDHAをはじめとしたオメガ3脂肪酸を摂取することで、筋肉量の増加や歩行速度の増加がみられたという報告があるのです(2)。これらの効果は、スポーツ選手以外の方にとっても重要といえます。
筋肉量を維持することは、高齢者のケガ予防や健康増進のために欠かせない要素なので、不足している方はDHAの積極的な摂取が望ましいです。
ただし、DHAの摂取だけで運動能力の向上が見込めるわけではありません。適切な運動やバランスのとれた食事など、整った生活習慣を送ることが重要です。
このように、DHAは脳機能や身体機能などの広範囲に好影響を与えていることがわかるでしょう。
胎児と子どもの脳発達におけるDHAの役割
DHAは成人だけでなく、胎児や子どもにも脳発達に関して好影響があるとされています。
ここでは、胎児と子どもの時期にDHAを摂取するメリットについて解説します。
胎児の時期にDHAを摂取するメリット
DHAは、胎児の脳や網膜の形成に欠かせない栄養素でもあります。
妊娠中にDHAを摂取することで、生まれてくる赤ちゃんの健康的な脳の発達が期待できます。具体的なメリットは、以下のとおりです(3)。
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脳の発達促進
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早産リスクの低下
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出生体重の増加
このように、胎児にとってさまざまな影響があることがわかるでしょう。
今後生まれてくる赤ちゃんのためにも、DHAを意識的に摂取してみてください。
子どもの時期にDHAを摂取するメリット
胎児の時期と同じように、子どもの時期にDHAを摂取することもメリットがみられています。
実際に、DHAを摂取した子どもは、そうでない子どもと比べると以下のような点があるとされています(4)。
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視覚的な課題のパフォーマンスの向上
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発達が遅くなる割合の低下
このように、コミュニケーション領域に関しては変化がみられないものの、細かい運動や問題解決に関するよい結果が示されているのです。
ただし、DHAを摂取する方は健康意識が高い傾向にあるため、別の影響も研究結果に関与している可能性があります。
必ずしも「DHAを摂取する=よい効果が現れる」というわけではない点に注意しましょう。
DHAの摂取方法と推奨量
DHAを摂取するには、どのような食べ物をどのくらい食べるのがよいのでしょうか。ここでは、DHAのおすすめの摂取方法と推奨量について解説します。
DHAのおすすめの摂取方法
DHAを摂取できるおすすめの食べ物が、魚介類です。とくに以下のような青魚はDHAが豊富に含まれています。
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サバ
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イワシ
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マグロ
これらの青魚を食事に取り入れることで、DHAを十分に摂取できるでしょう。魚を定期的に食べることが難しい場合は、サプリメントの利用もおすすめです。サプリメントであれば、手軽にDHAを摂取できるメリットがあります。
ただし、サプリメントを選ぶ際は、信頼できるメーカーの製品を選び、適切な用量を守ることが重要です。
過剰に摂取すると身体にとって悪影響となる可能性があるので、注意が必要です。自分のライフスタイルにあわせて適切にDHAを摂取することで、本来の効果を最大限に引き出せるでしょう。
DHAの推奨されている摂取量
DHAを含めたオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)の推奨されている摂取量は、以下のとおりです(5)。
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子ども(1〜2歳・男女):約0.7g/日
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成人男性:約2.2~2.3g/日
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成人女性:1.7〜2.0g/日
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妊婦:約1.7g/日
これらの量を目安にDHAを摂取するとよいでしょう。
例として、焼いたサンマは100gあたりのDHAが約1.2g、カツオの刺身は100gあたり約1gとされています。一方で、DHAの過剰摂取には注意が必要です。1日の推奨量を大きく超えると出血しやすくなったり、不整脈の発症リスクが上昇したりする恐れがあります(6)。
サプリメントを使用するとDHAを過剰摂取する可能性があるので、用量には十分に注意しましょう。
脳におけるDHAの重要性を知っておこう
DHAは、脳の健康にとって多くの効果をもたらす栄養素です。具体的には記憶力の向上や、高齢者の認知症予防などが期待できます。
また、胎児や子どもにとっても脳発達をサポートする役割があるとされています。DHAを効率的に取り入れる際は、サバやイワシなどの青魚を積極的に食べ、必要に応じてサプリメントを利用するのがおすすめです。
ただし、過剰摂取をすると身体に悪影響が出る恐れがあるので、適切な量を守ることが大切です。ぜひ今回の記事を参考に、脳の健康のためにDHAを取り入れてみてください。