食事で血管を強くするには、ダメージの素となる活性酸素や過剰な塩分・糖分・コレステロールを軽減する有用成分を含む食べ物を摂るのがおすすめです。
血管の壁が厚くなったり、弾力が失われて硬くもろくなったりして老化(動脈硬化)するのは、加齢や生活習慣が影響しています。進行すると血管の詰まりや破れを招き、脳卒中や心筋梗塞といった命を脅かす病気につながるのです。いつまでも健康的に過ごすためにも、気を付けるポイントを確認しましょう。
血管の老化(動脈硬化)の原因は?
血管の老化(動脈硬化)の原因は加齢だけでなく、乱れた食生活や運動不足・喫煙やお酒の飲み過ぎ・ストレスも引き金となります。加齢以外の血管老化(動脈硬化)の原因は、下記の通りです。
乱れた食生活
高塩分の食事は高血圧・脂っこい食事は血液をドロドロに・甘いものやカロリーの摂り過ぎは高血糖の原因となり、血管の老化を加速させます(1)。
運動不足
肥満や血行障害の原因となり、血管の老化につながります(1)。
喫煙
血管の内皮細胞にダメージを与える活性酸素を大量に発生させます(1)。
酒の飲み過ぎ
適度の飲酒は血圧を一時的に安定させるなど循環器系に良い影響を与えますが、飲み過ぎは高血圧や脳出血のリスクを上げるなど悪影響を与えます(2)。
ストレス
肉体的・精神的ストレスが過度にかかると、動脈硬化を加速させます(3)。長期間ストレスにさらされると、血管の内皮細胞と脳の境界にあるバリア機能(血液脳関門)を低下させ、うつにつながる可能性も示唆されているので、発散しましょう(4)。
強い血管を保つ!おすすめの栄養素は?
柔軟性と弾力がある健康的な血管のために、積極的に摂りたい7つの栄養素を紹介します。
たんぱく質
たんぱく質は血管をつくるうえで欠かせない栄養素です。20種類のアミノ酸が約50~1000個結合して構成されます。アミノ酸がバランス良く含まれる食品(肉・魚・卵・大豆製品など)は、体内での利用率が高いのでしっかり摂りましょう(5)。
関連記事:必須アミノ酸とは?9種類必須アミノ酸の働きと含有量が多い食品を紹介
ビタミンACE(エース)
抗酸化作用を持つビタミンA(β-カロテン)・C・Eの総称であり、3つが団結すると働きが強まります。血管を傷つける活性酸素の働きを抑えて、血管の健康維持に効果的です(6)。
オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)
オメガ3脂肪酸の働きは、細胞膜を柔らかくしたり、悪玉コレステロールや中性脂肪を低下させたりします(7)。魚に含まれるDHAやEPAが代表的で、高血圧・動脈硬化・心疾患予防に効果的です(8)。
こちらもご参考に:オメガ3とは?オメガ3脂肪酸の8つ効果一覧【医師監修】
ポリフェノール
ポリフェノールは8000種類以上もある植物特有の渋みや苦み・色素の成分です。代表的なものにはケルセチン・カテキンがあります。ポリフェノールは悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、血管の健康維持に効果的です(9)。
ポリアミン
ポリアミンは細胞分裂や増殖に欠かせない成分で、すべての生物の細胞内に含まれています。ポリアミンは炎症や老化を抑制する働きがあり、動脈硬化や心血管疾患の予防効果が期待されています(10)。
カリウム
カリウムは体内の塩分を体外に排出する働きがあるミネラルの一種です。塩分の摂り過ぎによる高血圧を予防して血管を労わります(11)。
食物繊維
食物繊維は小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、多様な健康効果をもたらす成分です。血管に関わる効果では、悪玉コレステロール値を下げたり、血糖値上昇を抑制したりします(12)。
強い血管を保つ!おすすめの食べ物20選
健康な血管を保つために、積極的に摂りたい食べ物を紹介します。
【1-4】緑黄色野菜4選
代表な緑黄色野菜:かぼちゃ・にんじん・ブロッコリー・ほうれん草
色が濃い野菜は緑黄色野菜と呼ばれ、強い抗酸化作用を持つビタミンエース(A・C・E)を豊富に含んでいます(13)。厚生労働省では1日に350g以上の野菜を摂るよう推奨しており、そのうち120g以上(約1/3)を緑黄色野菜から摂るのが理想的です(14)。
【5】オリーブオイル
オリーブオイルにはオメガ9系脂肪酸の一種であるオレイン酸を多く含み、悪玉コレステロールを低下させて善玉コレステロールを上昇させる働きがあります。動脈硬化による循環器疾患のリスクを低減するとの研究結果もある健康油です(15)。ドレッシングでの生食はもちろん、熱にも強いので揚げ油にも使用できます。
【6-10】脂がのった魚5選
代表な魚:イワシ・サンマ・サバ・サケ・マグロ
脂がのった魚には、DHAやEPA(オメガ3)が豊富に含まれています。オメガ3は血管をしなやかにするのに効果的ですが、酸化や加熱調理による流出で損失しやすいとの意見が一般的です(16)。
一方で、近年の研究では「酸化と加熱による分解がオメガ3損失の主要な要因ではない」との報告もあります。無駄なく魚のオメガ3を摂取するには物理的に魚の油を流出させない調理の工夫が大切とのことです(17)。
青魚の紹介はこちら:青魚の種類は?青魚の栄養素とメリットをご紹介
【11】ゼラチン
ゼラチンの87%は、動物の皮や骨に含まれるタンパク質(コラーゲン)です。コラーゲンは、肌のハリやうるおい効果が有名ですが、血管を形作るうえでも欠かせません(18)。
ゼラチンから作られたゼリーや煮こごりを食べれば、手軽にコラーゲンが摂取できます。ゼラチンは味をほとんど変えないので、粉ゼラチンをスープや味噌汁に混ぜたり、炊飯する際に混ぜて炊くのもおすすめです。
【12】キウイフルーツ
キウイは果物の中でもトップクラスのビタミンCやルテイン(ポリフェノールの一種)を含み、カリウムや食物繊維も豊富です。抗酸化作用や高血圧の予防・血糖値の上昇抑制・悪玉コレステロールの低下といった多角度から血管の健康維持に役立ちます(19)。
【13】レモン
レモンには抗酸化作用のあるビタミンCやエリオシトリン(ポリフェノールの一種)を含み、さらに活性酸素の発生を抑制するクエン酸も豊富です。レモン果汁でも健康効果が期待できます(20)。
【14】玉ねぎ
黄色い色素とほのかな苦みの素であるケルセチン(ポリフェノールの一種)が含まれています。欧米の調査では、ケルセチンの摂取量が多い人は心筋梗塞で亡くなる割合が低いとの結果が出ています。
日本の研究では、ケルセチンの摂取量が多い人は悪玉コレステロールが低値だったとの報告もある健康食品です(21)。
【15-17】発酵食品3選
代表な発酵食品:納豆・味噌・しょうゆ
納豆や味噌・しょうゆといった発酵食品には、動脈硬化を抑制するポリアミンが含まれています。中でも納豆は抜群に含有量が多く、血管の健康維持におすすめの食品です(22)。調味料は過度に使うと塩分過剰になるので、料理の味つけ程度の使用に留めましょう。
【18】酒粕
米麹の10倍ものレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を含んでいます。レジスタントスターチは食物繊維に似た働きがあり、食後の血糖値の急上昇抑制や悪玉コレステロール低下に効果的です。
酒粕の多様な有用成分により、血圧上昇抑制・血流改善といった効果も報告されています(23)。
【19-20】シナモン・ヒハツ
シナモンやヒハツは衰えた毛細血管を復活させる効果が示唆されています。毛細血管は、体中に酸素や栄養を届けるために不可欠ですが、老化により機能が衰えてしまうのです。
毛細血管の老化を防ぐには、Tie2(タイツー)という受容体が活性化する必要があります。なぜなら、Tie2が機能しないと、毛細血管の内皮細胞にあるわずかな隙間が開きっぱなしになるので、酸素や栄養素が血管から漏れてしまうからです。
Tie2が活性化すると隙間が閉じて、全身に酸素と栄養分を届けられるようになります。シナモンやヒハツにはTie2を活性化させる働きがあるので、食事のアクセントに使うとよいでしょう(24)。
血管を労わりたい方におすすめのレシピ
血管の若さは、見た目の若さにも現れます。おいしく美と健康を目指しましょう。
マグロの塩レモンカルパッチョ
血管の健康維持におすすめのマグロ・玉ねぎ・レモン汁・オリーブオイルを使ったヘルシーな一皿です。
【材料】(2人分)
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マグロの刺身 150g
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玉ねぎ 1/4個
<A>
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レモン汁 大さじ1/2
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塩 小さじ1/3
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はちみつ 小さじ1/2
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オリーブオイル 大さじ2
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大葉 2枚分
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ブラックペッパー 少々
【作り方】
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玉ねぎは、薄くスライスして水にさらして辛みを軽減させてから水気を切る。
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ボウルに<A>を混ぜる。
ほうれん草の納豆和え
血管の健康維持におすすめのほうれん草と納豆・しょうゆを使った手軽な副菜です。
【材料】(2人分)
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ほうれん草 2/3わ
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納豆 1パック
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しょうゆ 少々
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かつお節 適量
【作り方】
血管の健康を守る!3つの食習慣
血管の健康のためには、栄養素を意識して摂るのも大切ですが、適量に抑えるのも重要です。気を付けたい食事のポイントを紹介します。
1. 塩分控えめ
塩分の摂り過ぎは、高血圧をもたらし血管にダメージを与えます。日本人の塩分摂取目標量は、男性7.5g/日・女性6.5g/日ですが(25)、平均9.7g/日ほど摂取しており、過剰となっているのです(26)。血管のためにも減塩しましょう。
2. 糖質は適量に
甘いものや砂糖入りの清涼飲料水など糖質の多い食品を摂取すると、高血糖の状態になり、血管にダメージを与えます。また、ごはんやパンといった主食にも糖質を多く含んでいるので、適量に抑えましょう(24)。
3. 善玉コレステロールを増やす
コレステロールには悪玉と善玉があり、悪玉は全身にコレステロールを運ぶのに対して、善玉は余分なコレステロールを回収する働きがあります。
悪玉が増えると動脈硬化の原因になりますが、同時に善玉も増えて余分なコレステロールを回収できれば問題は起こりません。
善玉を増やすには、上記で紹介した魚・発酵食品・野菜・緑茶などを積極的に摂るのがおすすめです(24)。
血管の健康と食品に関するQ&A
Q1:血管を若くする飲み物は?
A:下記の飲み物があります。
1.緑茶
ポリフェノールの一種であるカテキンが含まれています。カテキンは、お茶の苦み成分で、抗酸化作用や血糖値の上昇抑制・悪玉コレステロール低下作用があります(27)。
2.ココア
動脈硬化を抑制するカカオポリフェノールや、血流を促すテオブロミン、血圧を下げるカテキンといった血管の健康維持に役立つ成分が豊富に含まれています(28)。
3.ルイボスティー
Tie2を活性化させて、衰えた毛細血管を復活させる効果が示唆されています(24)。
4.コーヒー
抗酸化作用のあるクロロゲン酸やメラノイジンといったポリフェノールが豊富です。動脈硬化を抑制するとの報告や(29)、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べて血管の健康状態が良好であるとの研究結果も出ています(30)。
Q2:コーヒーは血管に悪いですか?
A:いいえ。上記に示したとおり、コーヒーは血管の健康維持に役立つ成分が豊富に含まれています。ただし、飲み過ぎは、カフェインの過剰摂取となりイライラや不安・不眠の原因になるので、健康な成人であれば1日2~3杯までにしましょう(31)。
Q3:他に血管が強くなる方法はありますか?
A:ストレッチがおすすめです。血管の健康のポイントは、血管を柔らかく保つことです。血管にある筋肉をストレッチでのばしてあげると、血管の筋肉の緊張がほぐれて柔らかくなります。膝の裏や脚の付け根などをストレッチで伸ばしてあげましょう(32)。
食事と生活習慣で血管の健康を守ろう
血管はボロボロになっても自覚症状がほとんど現れないので、気づかぬうちに脳卒中や心筋梗塞といった重大な血管病を招きます。身体が出すSOSにいち早く気づくには、健康診断が必要です。
健康診断結果が問題なかった方であっても、日々の不摂生が積み重なると、必ず身体の不調につながります。バランスが良い食事と規則正しい生活習慣で、1つしかないあなたの身体を労わってあげてください。