MSMは、動植物に広く含まれている自然由来の有機イオウ化合物で、身体に欠かせないせ成分です。アメリカでは、MSMの健康効果が注目され、特に関節や筋肉のサポートに役立つ成分として研究が進められました。
最近では、MSMが関節、皮膚や爪の健康を維持し、関節痛の低減や運動後の不快感を和らげる効果が期待されています。
この記事では、MSMの基本情報からその効果に関する研究報告、おすすめの摂取方法まで幅広く解説します。
MSM(メチルサルフォニルメタン)基本情報
MSM(メチルスルホニルメタン、Methyl Sulfonyl Methane」は、地球上のさまざまな動物や植物などに含まれる自然由来の有機イオウ化合物で、硫黄原子を中心とした小さな分子です(1)。
イオウは、体内でたんぱく質やコラーゲンを合成する際に欠かせないミネラルであり、皮膚、髪、爪、軟骨などの構造を作るために重要な栄養素です。そのため、MSMの働き主に関節の柔軟性と健康維持、コラーゲン生成をサポート、肌の美容に効果があるとされています。
MSMは自然由来だけではなく、人工的に合成することもでき、古くから化学研究で活用されてきた歴史も併せ持つ物質です(3)。MSMは、果物、野菜、牛乳、穀物などの食品に含まれていますが、その含有量は非常に少ないため、効率的に摂取するにはサプリメントの利用がおすすめです。
MSMのメカニズム
MSMは、細胞修復において重要な役割を果たし、コラーゲンやたんぱく質の合成をサポートすることが知られています。
この過程で、MSMは関節や皮膚、髪の健康を保つ助けとなります。さらに、MSMは抗炎症作用や抗酸化作用を通じて、体内での炎症を抑制するメカニズムを提供します。
特に、MSMは炎症を引き起こす重要なシグナル経路であるNF-κB経路を調整することで、過剰な免疫反応を抑え、体内の炎症を軽減します。
このような作用により、MSMは関節痛や運動後の筋肉痛、さらには皮膚の健康維持に効果があるとされています。
1970年代に臨床応用においても注目を集め始めたMSMは、アメリカの医学の分野で関節炎などの炎症反応の軽減や、運動後の不快感を和らげる効能が報告されたことがあります
2001年から日本でMSMは食品素材として認可され、健康食品として利用できるようになりました。
MSM(メチルスルフォニルメタン)の効果と役割
近年注目を集めるMSMは、主に関節保護の作用に焦点を当てられていますが、実際には臨床研究により様々な効果が報告されている成分です。MSM(メチルスルフォニルメタン)は、関節痛の軽減、運動後の筋肉痛や関節痛の緩和、酸化ストレスの軽減、細胞修復、免疫力向上、さらには肌の弾力性維持やアレルギー症状の改善に効果がある成分です。
1. 関節痛の軽減

MSMの最も注目されている効能は、炎症を抑えて関節痛みを軽減する作用です(1)。
炎症が引き起こす痛みや腫れに対して、MSMは、痛みや腫れを減らす手助けをします。特に、運動後や年齢を重ねたときに関節痛を和らげるのに役立ちます。
MMSMは、炎症反応の調節の上で非常に重要な、「NF-κB経路」というシグナル伝達経路の過剰な働きを抑制することで、多くの炎症反応を軽減することが示唆されています(5)。
MSMを変形性膝関節症の患者に摂取してもらった臨床研究では、1日3回MSM 500mgを12週間摂取したグループで、変形性膝関節症の症状や痛みを計るスコアが大きく改善したことが報告されています(6)。
加齢に伴う膝や肘などの関節の痛みを抱えるようになった方にとって、MSMは痛みを和らげ活動をしやすくする効果が期待される成分と考えられています。
また、炎症反応を引き起こすシグナル物質は軟骨の保存自体にも悪影響を与えるため、MSMはこのような物質の産生を抑制して、軟骨の保護にも役立つことが示唆されています(7)。
加齢による膝の痛みや違和感は、主に軟骨にかかる負担や軟骨成分の減少が原因とされています。
2. 運動後の筋肉痛と関節痛の緩和

MSMは急性運動後の迅速な体力と状態の回復をサポートすることが期待されています。
MSMの抗炎症作用や抗酸化作用は、免疫だけでなく運動機能にも良い影響を与えることが、ヒトを対象とした研究により示唆されています。
ハーフマラソンに参加するマラソンランナーを対象に、MSMまたはプラセボを二重盲検法で無作為に割り当て、レース前21日間+レース後2日間の計23日間摂取した両グループの状態を比較した研究があります。
MSMを摂取したグループで筋肉痛と関節痛のスコアが有意に低くなったことが報告されています(11)。
3. 酸化ストレスを軽減するによる体力回復

MSMまたはプラセボを10日間摂取した一般男性に対し、14kmのランニング後の状態を比較した別の研究においても、酸化ストレスを測る指標の値がMSM摂取グループで低かったことが報告されており、MSMは急性運動後の酸化ストレスを軽減することが示唆されています(12)。
酸化ストレスを軽減により、運動後の体力回復が速くなることが期待されています。
4. イオウの補給による細胞修復
MSMに含まれるイオウは、細胞の修復や再生を助ける重要な役割を果たします。イオウはコラーゲンやたんぱく質の合成に必要不可欠な成分で、特に皮膚や関節の健康維持に重要です。
MSMを摂取することで、細胞の修復をサポートすることが示唆されています。
5. 肌の弾力性の維持

MSMは、美しい肌の維持にも有効である可能性が研究により示唆されています。
MSMまたはプラセボを1日3g、16週間摂取した女性の肌を、シワの数や深さなどの計測、主観的評価、専門家による客観的評価で比較した研究があります。
MSMを摂取したグループでシワの総数、深さなどの各指標が、機器の計測と専門家による客観的評価の両方で統計的に有意に改善した結果が得られました(13)。
また、主観的な評価についても、統計的に有意ではありませんでしたが、プラセボ摂取グループに比べて良好な結果が得られたと報告されており、MSMの美容への効能が示唆される結果となったことが報告されています。
6. 免疫力を高める

MSMは活性酸素のコントロールする働きもあります。
活性酸素は、適量であれば免疫機能においても重要な物質ですが、過剰になると免疫機能の低下、血管へのダメージ、シワの形成など、多くの問題を引き起こすことが知られています(8)。
MSMは活性酸素を産生する他のシグナル伝達経路の働きも抑えることが研究で報告されており、さまざまな角度から活性酸素の過剰産生を抑えることが示唆されています(10)。
MSMは活性酸素の過剰な発生を防ぐことで、免疫力を高め、健康をサポートする働きがあると考えられています。
7. 花粉症によるアレルギー性鼻炎の軽減
MSMは、アレルギー反応を引き起こす物質の影響を軽減する働きがあることが示唆されています。
アメリカで行われた試験では、花粉症によるアレルギー性鼻炎の患者50名が、1日2,600mgのMSMを30日間摂取した結果、季節性アレルギー性鼻炎の症状が改善されたと報告されています。(16)
MSMを摂取することで、アレルギーによる症状をコントロールし、快適な日常生活をサポートします。
MSMは免疫調整と抗炎症の働きがある
MSMは免疫系を調節する役割があり、炎症を抑える効果があるとされています。
免疫応答や炎症反応を調節する重要なシグナル伝達経路として、NF-κB経路があります。この経路が過剰に活性化されると、慢性炎症や病気の原因となることがあります。
NF-κB経路内では、細胞内のミトコンドリアが活性酸素を産生し、この活性酸素が炎症反応を引き起こします。MSMは、この過剰な免疫反応を引き起こすNF-κB経路を抑制することで、免疫系の過剰な働きを抑えると考えられています。(5)(9)。
その結果、MSMがNF-κB経路を調整する作用は、炎症反応を抑える効果と、活性酸素の過剰産生を抑える効果の両方により、適切な免疫機能の維持に寄与すると考えられています。
MSMの副作用
MSMはヒトにとって忍容性が高い物質として知られており、安全性が高い物質であると考えられています。
厚生労働省においてMSMの摂取量に関する規制はなく、アメリカのFDAが定める「一般に安全と見なされる物質(generally recognized as safe:GRAS)」に1日4,845mg以内のMSM摂取が認定されています(1)。
MSMを用いたサプリメントの摂取は基本的に安全性が高いとされていますが、アレルギーが心配な場合は、少量から摂取し、反応を観察することが有効です。
過剰に摂取すると、消化器系の不調(例えば胃のむかつきや下痢)やアレルギー反応が報告されることがあります。
妊娠中や授乳中の女性、薬を服用している方、または医療治療を受けている方は、摂取を検討する前に医師に相談することをお勧めします。
MSMを活用するサプリメント
MSMは関節の健康をサポートするサプリメントとして広く使用されており、特に関節の柔軟性や痛みの軽減に効果が期待されています。
また、美肌や免疫機能の向上にも役立つため、成人向けの健康食品として人気です。さらに、ペット用にも関節ケアを目的としたMSMサプリメントがあり、猫や犬の関節健康をサポートするために使われています。
よくある質問:MSMとグルコサミンの組み合わせ
MSMとグルコサミンは、どちらも柔軟な関節の維持に効果的な要素を持つことから、しばしば同一のものだと誤認されます。
グルコサミンはグルコースにアミノ基がついたアミノ糖の一種であるのに対し、MSMは硫黄原子が中心となる有機イオウ化合物であるため、明確に別の物質です。
関節痛に関する研究
変形性膝関節症に対する経口摂取の効果を検証した研究では、MSMとグルコサミンを両方摂取することで、より迅速な効能を得られることが示唆されています(6)。この研究では、
-
①MSM+グルコサミン
-
②MSM+プラセボ
-
③プラセボ+グルコサミン
-
④プラセボ+プラセボ
4つのグループに、被験者が二重盲検法で無作為に割り当てられ、それぞれ1カプセル500mg含まれるものを1日3回、12週間摂取した跡部、変形性膝関節症の症状を評価する疼痛指数や関節膨張指数などが比較されました。
その結果、MSMまたはグルコサミンのどちらかのみを摂取したグループでも、プラセボに比べて有意に症状が改善しましたが、MSMとグルコサミンの両方を摂取したグループではそれを上回る疼痛指数、膨張指数の低下が確認され、組み合わせて摂取する効能の大きさが示唆されました(6)。
また、MSMをヒアルロン酸と組み合わせる方法は、別の研究により効能を高めることが示唆されています(14)。
MSM単体でも効果が期待できますが、グルコサミンやヒアルロン酸などと組み合わせると、より高い効果が期待できると考えられています。
病原体などの体内に入った異物から身体を守るため、まずは直接異物を迎撃する細胞グループと、異物への迎撃を指示する細胞グループがあります。
これらのグループ間でのコミュニケーションを可能にするシグナル物質が連携し、さまざまな「シグナル伝達経路」を働かせることで、臨機応変に異物と戦っています。(4)。炎症反応は、身体が異物と戦った結果生じるものです。