プロテオグリカンって聞いたことありますか?プロテオグリカンは、たんぱく質に糖がくっついた「糖タンパク」と呼ばれるものです。
ヒトの体内に存在する物質で、関節や皮膚、眼などのあらゆる体の組織を作るための重要な材料のひとつ。とくに軟骨組織に多く存在していることが知られています。
プロテオグリカンは高い保水性と柔軟性の高いクッションのような働きがあるため、とくに美容分野やひざ関節などの健康分野で注目されています。
今回はそんなプロテオグリカンの構造や役割などを、初心者の人にもわかりやすく解説していきます。
プロテオグリカンとは?
プロテオグリカンとは、タンパク質に「グリコサミノグリカン(GAG)」という糖鎖が結合した複合体で、主に細胞外マトリックスに存在しています。プロテオグリカンは、糖タンパクの一種です。その中でもプロテオグリカンは、特に糖鎖が非常に長いことが特徴です。
糖タンパクは私たちの体のあらゆる細胞に存在し、糖質とタンパク質が結びついた物質のことです。質の形によって、血液型が決まったり、体の水分を保持したり、細胞の増殖を制御したり、と私たちの体が生命活動を行うのになくてはならない物質です。
プロテオグリカンは、関節の軟骨や皮膚、眼の角膜などに多く含まれており、糖鎖同士のすき間に水分を保持することで、高い保水性を発揮します。
このため、プロテオグリカンは水分の保持だけでなく、細胞の成長や情報伝達の調整など、生命活動において重要な役割を担っています。
昔からプロテオグリカンは注目されていましたが抽出が難しく、1g抽出するために3,000万円もの多額の費用がかかるため、実用化は夢のまた夢でした。(1)
しかし、青森県にある弘前大学が安全に安価で、サケの鼻軟骨からプロテオグリカンを抽出する方法を発見したため、現在では日常で活用されるようになりました。
有名なプロテオグリカンの種類
プロテオグリカンについている糖質には、いろんな種類があります。代表的なものには、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ダーマタン硫酸などがあります。それぞれが異なる構造や機能を持ち、プロテオグリカンの性質や働きを決定づけています。
中でも特によく知られているのが、関節の軟骨組織に多く存在するプロテオグリカン「アグリカン」です。
アグリカンは、コンドロイチン硫酸やケラタン硫酸といった長い糖鎖を持つ大型のプロテオグリカンで、主に関節の軟骨組織に多く存在しています。このアグリカンは、水分保持や衝撃吸収といった軟骨の機能を支える重要な成分です。
近年では、サケの鼻軟骨から抽出されたアグリカンや類似のプロテオグリカンが、保水性や美容効果の高さに注目され、化粧品や健康食品として利用されることが増えています。
実際に「サケ由来プロテオグリカン」として市販されております。健康情報に詳しい方なら知っているかもしれませんね。
プロテオグリカンの役割と働き
プロテオグリカンには次のような役割があります。
1. 関節を滑らかに動かすためのクッションの役割
若い時はスムーズに関節を動かせるのに、歳をとるとあちこちの関節が痛むのはなぜでしょうか。原因のひとつに、軟骨組織の減少があげられます。
私たちの関節は、骨と骨が直接つながっているのではなく、あいだに「軟骨組織」があります。
軟骨組織のおかげで、骨と骨が擦れ合わず、スムーズに関節を曲げることができるのです。この軟骨組織は加齢により減少していき、関節を曲げると骨と骨が擦れ合ってしまって、ひざの痛みがでます。
プロテオグリカンは関節の軟骨組織を形成するもののひとつであり、私たちが健康に生活するうえで欠かせない物質です。
(ちなみに、ひざ関節にいい成分で有名なグルコサミンも軟骨を形成する成分のひとつ。グルコサミンはプロテオグリカンの原料です。)
2.皮膚や眼組織の細胞の再生や保湿の役割
もうひとつ、プロテオグリカンの役割で忘れてはならないのが、保水能力と細胞のターンオーバーを整えることです。
プロテオグリカンは皮膚や眼組織に多く存在しており、肌や目の乾燥を防いでいます。
さらに細胞のターンオーバーを整えて、各組織が正常に機能する役割も担っています。
年齢とともに、皮膚や眼組織に存在するプロテオグリカンも減少していきます。すると肌も目も乾燥しやすくなるなどの不具合が出るようになります。
プロテオグリカンの健康と美容作用
プロテオグリカンは抽出することが難しく、臨床の現場ではヒアルロン酸やコンドロイチンなどが主に使われていました。
そのため、他の物質と比べてあまりプロテオグリカンの研究がされていませんでした。現在、プロテオグリカンの役割や活用方法など、さまざまな研究が行われています。
また、近年の研究では、プロテオグリカンの構造や糖鎖の異常が、がん細胞の形成や糖尿病の発症など、さまざまな疾患と関連していることが明らかになってきました。(2)
プロテオグリカンで期待される健康に対する効果を紹介します。
1.ひざ関節の健康維持に
プロテオグリカンは膝の軟骨組織に多く存在する物質です。
体内でのプロテオグリカンの産生量が減ったり、分子量が減ったりするため、歳をとるとひざ軟骨組織が減っていきます。ひざ軟骨組織は骨と骨のあいだのクッションの役割をしていて、軟骨が減ると骨と骨が擦り合わさって、歩いたり座ったりの動作をする度に痛むようになります。
プロテオグリカンもグルコサミンやコンドロイチンと同様、ひざ関節の健康維持のために意識的に摂取することがおすすめです。
2.肌の保湿やエイジングケア
美容分野においてもプロテオグリカンの注目度は年々高まってきています。
プロテオグリカンの特徴である「保水性」と「弾力性」。「保水性」は皮膚のうるおいを保ち、みずみずしい肌に導いてくれます。
「弾力性」は加齢でしぼんだ肌をふっくらとさせて、肌にハリを与えてくれることが期待されています。
また、EGF(上皮細胞成長因子)という成分を聞いたことがありますか?EGFは肌の新陳代謝をあげて、肌のターンオーバーを整えてくれます。
EGFは加齢で減少することがわかっていますが、プロテオグリカンにはEGF様作用があります。(3)
このような特徴から、年齢肌や乾燥肌の方におすすめの成分です。
3.抗炎症作用
現在、プロテオグリカンのサプリメントを用いて、国内外で臨床研究が進められています。
最初はひざ軟骨組織の形成や肌の保水能力に注目して試験をしていましたが、試験を進めていくうちに抗炎症作用があることがわかってきました。(3)
抗炎症作用があるということは、ひざ関節の疼痛緩和によい可能性があるということです。
ひざ関節の軟骨補修だけでなく、炎症による痛みの緩和作用があるのならば、一石二鳥ですね。
また、皮膚に塗った場合は肌荒れの予防も期待できます。美容目的の場合も、保湿・エイジングケア・肌荒れ予防と多目的に使えることはプロテオグリカンのメリットといえるでしょう。
4.がん治療に使われる
最近ではプロテオグリカンをがん治療に使えるのではないか?と研究が進められています。
健康な人の体内でもがん細胞は作られています。
ですが、健康な人は作られたがん細胞を免疫システムが排除してくれているのでがんにならないのです。プロテオグリカンはそんながん細胞の増殖を抑制する働きに関与しているのではないかと考えられています。(4)
現在はまだまだ研究段階にあるので、実際に臨床の現場で使われるようになるにはもうしばらく時間が必要でしょう。
プロテオグリカンの摂取方法
プロテオグリカンを体内で増やす方法は大きくわけて3つの方法があります。
1.食事からプロテオグリカンを摂取する
まず、食品からプロテオグリカンを摂取する方法があります。
プロテオグリカンを多く含む食材に東北地方で「氷頭(ひず)なます」という郷土料理があります。
サケの頭の軟骨部分をなますにした酢の物で、正月によく食べられるものです。サケがよく獲れる地域で食べられる料理ですが、あまり馴染みのない人も多いかもしれません。
そのほかにも、牛や豚、鶏の軟骨やうなぎなどにもプロテオグリカンは含まれていますが、いずれも加熱調理をするとプロテオグリカンが壊れてしまう難点があります。
家庭料理で日常的にプロテオグリカンを摂取することは難しいです。
2.日常的に運動を行い、体内でのプロテオグリカンの産生を促す
体内のプロテオグリカンは、運動によって増えることがわかっています。運動といっても、激しい運動は必要ありません。軽いウォーキングやストレッチなどでも十分効果があります。
関節を曲げたり伸ばしたりすると、全身の血流がよくなり酸素が運ばれます。その結果、体内でのプロテオグリカンの産生が促されるのです。
軽い運動はひざ関節だけでなく、生活習慣病やうつ病などの予防にも効果的です。1日10分からでよいので、ウォーキングやストレッチを初めてみましょう。
ただし、すでにひざに痛みがあり、歩いたり屈伸したりするとひざが辛いようであれば、無理に運動するのはやめましょう。
その場合は、医療機関を受診して、適切な治療や指示を受けるようにしてください。
3.サプリメントを活用して、手軽に摂取する
プロテオグリカンを食事から摂取することは難しいと紹介しましたが、最近はサプリメントという選択肢もあります。
サプリメントは調理の必要もなく、手軽に水だけで摂取できるのでおすすめです。
プロテオグリカンの一日摂取量は、それぞれのサプリメントに記載の量を守って、毎日飲むようにしましょう。痛み止めのような即効性はないので、毎日欠かさず飲むことが重要です。
まとめ
今回はプロテオグリカンの紹介でした。プロテオグリカンは「ひざ関節の軟骨組織」や「肌の保湿・弾力性」に主に関与していることがわかっていただけたでしょうか。
薬局で働いていると、日々患者さんからの悩み相談を受けます。
なかでも多いのは「ひざが痛くて歩けない。」ということ。深刻な人では、日常生活にも支障がでているという人も。ひざ関節は一度悪くなってしまうと治療は難しく、痛み止めや注射で騙し騙しやっていくか、思い切って手術するか、皆さん悩まれています。
ひざ関節の症状が重い場合は病院を受診してほしいのですが、そうならないためにも日頃から軽い運動を続けたり(10分、できれば30分くらいのウォーキング)、サプリメントをうまく活用したりして、健康な生活を続けられるようにしましょう。
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