栄養素 - 脂質

オメガ3は体に悪い?オメガ3脂肪酸の摂取を避けた方がいい4つの事例を紹介

監修者 木村 彩香 薬剤師 公開日:2024-10-30 最終更新日:2024-12-05

栄養素 - 脂質

オメガ3は体に悪い?オメガ3脂肪酸の摂取を避けた方がいい4つの事例を紹介

監修者木村 彩香 薬剤師 公開日:2024-10-30 最終更新日:2024-12-05

オメガ3脂肪酸とは、必須脂肪酸のうちのひとつです。生きていくうえで必要な栄養素であるにも関わらず、体内で作ることができないため、食事から摂取しなければなりません。オメガ3脂肪酸を含む食品には、青魚や魚介類、えごま油、亜麻仁油などがあります。これらを日常的(理想は週3日以上)に摂取することで、心疾患の発症率の低下、アレルギー緩和、コレステロール値の改善など、健康に役立つことが報告されています。

一般的に健康に良いオメガ3脂肪酸ですが、摂り方によっては健康にマイナスに働く場合もあります。今回は、あまり知られていないオメガ3脂肪酸の摂取しないほうがいい場面を紹介します。

オメガ3脂肪酸とは?必須脂肪酸である働き

脂肪酸の種類

オメガ3脂肪酸は、必須脂肪酸のひとつ。「必須」とつくくらいなので、体内に必ず必要な栄養素です。オメガ3脂肪酸には、血中の中性脂肪を減少させたり、肝臓から中性脂肪が作られるのを抑えたりする働きがあります。(1)

また、中性脂肪は体のエネルギー源となったり、ビタミンを体内に吸収する助けをしたり、重要な役割があります。しかし、中性脂肪が過剰に増えると脂質異常症(高脂血症)になります。(2)

最近は、お菓子やパンが安価で手軽に美味しく食べられるので、コレステロール値が高い方が多くなってきています。コレステロール値が高い状態が続くと、動脈硬化や脳卒中のリスクが高まります。初期の場合は、食事や運動で値が改善する可能性がありますので、早めに対処することがポイントです。

 

オメガ3脂肪酸に期待できる効果は次のとおりです。(1)

  • 心疾患・脳卒中のリスクを下げる

  • 中性脂肪を減少させる

  • メンタルヘルスを安定させる

  • 認知症のリスクを低減する

  • 関節リウマチの症状緩和に役立つ可能性がある

また、肌のターンオーバーを整える美容効果も期待できます。

 
オメガ3脂肪酸は必須脂肪酸
オメガ3脂肪酸は体内で作ることができなくて、食事から摂取する必要があるため、必須脂肪酸として認識されています。
オメガ3とは?オメガ3脂肪酸の8つ効果一覧【医師監修】
オメガ3は脳の健康を支える:全年齢層に不可欠な脂肪酸

 

オメガ3脂肪酸の効果や摂取目安量

オメガ3脂肪酸は、血中の中性脂肪値を下げる働きがあります。中性脂肪やLDL-コレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が高いと健康診断で指摘された場合は、オメガ3脂肪酸を意識した食生活に変えるとよいでしょう。

オメガ3脂肪酸の1日摂取目安量は次のとおりです。(1)

年齢

男性(g)

女性(g)

18~29歳

2.2

1.7

30~49歳

2.2

1.7

50~64歳

2.3

1.9

65~74歳

2.3

2.0

75歳以上

2.3

2.0

妊婦

-

1.7

授乳婦

1.7


α‒リノレン酸(オメガ3脂肪酸のひとつ)の摂取(1.8 g/日)により総死亡率が低下することが、フランスとインドの研究で明らかになっています。一方で、α‒リノレン酸を1日摂取量より多く摂っても、血液検査で異常は認められませんでした。摂取上限量は設定されておらず、摂りすぎる心配はほぼありません。(3)

ちなみに、イヌイット民族(北アメリカ先住民)では、なんと1日あたり13g以上ものオメガ3脂肪酸を摂取しているそうです。そんなイヌイット民族の動脈硬化や心筋梗塞の発生率は低いという研究結果もあります(4)
 

オメガ3脂肪酸1日摂取目安量
成人男性:2.2~2.3 g / 日
成人女性:1.7~2.0 g / 日>
 

オメガ3脂肪酸は体に悪い?オメガ3脂肪酸を摂取するときの注意点4つ

基本的に、オメガ3脂肪酸は健康にいい影響を与える栄養素である、という認識は忘れないでほしいのですが、以下の4つのパターンに当てはまる場合は、オメガ3脂肪酸はお体に悪影響を与える可能性があります。これらの状況では、オメガ3脂肪酸の摂取に注意が必要です。

 

1. 酸化したオメガ3脂肪酸を摂取した場合

オメガ3脂肪酸は、高温になるとすぐに酸化する性質があります。酸化すると過酸化脂質とよばれる毒性の高いものになります。過酸化脂質の大部分は腸で分解されるので、健康に影響を及ぼすことはまれですが、それでも栄養素としての働きがなくなるので注意してください。

とくにえごま油、亜麻仁油、魚油は加熱調理したり、夏場に常温で保存すると、すぐに酸化します。できるだけ新鮮な油を生で摂りましょう。ヨーグルトやサラダにかけて食べる方法がおすすめです。

サプリメントで摂取する場合は、開封したら期限内であってもすぐに飲み切るようにしましょう。えごま油や亜麻仁油ほど使い方が厳しくないので、サプリメントでの摂取は手軽でおすすめです。選び方は次のとおり。

  1. オメガ-3脂肪酸の含有量・濃度が高いもの

  2. 遮光性容器に入っているもの

  3. IFOS(魚油の第三者認証機関)の認証を受けているもの

この3つが質の高いサプリメントを見分けるコツです。参考にしてみてください。

 

2. オメガ3脂肪酸を過剰摂取した場合

オメガ3脂肪酸は、過剰摂取の心配はほぼありません。とくに青魚は週4日以上食べた方が健康にいいと言われています。(現代ではそんな頻回に青魚を食べることは難しいですが……2日に1度は魚を食べるよう心がけるといいです。)

しかし、α‒リノレン酸の摂取量が増加すると、前立腺がんになるリスクが高まるという報告が欧米であります。ただ、前立腺がんとの関係は認められなかったという報告もあり、まだα‒リノレン酸と前立腺がんの明確な関係は明らかになっていません(5)(6)

男性で前立腺の数値(PSA値)が高い場合は、サプリメントなどでオメガ3脂肪酸を摂りすぎないように注意をしましょう。適正使用の範囲内であれば、健康に影響がないことがほとんどないと思いますが、念のため医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

また、飽和脂肪酸や汚染された魚油が入った質の悪いサプリメントを過剰摂取した場合も、体に悪影響を及ぼします。魚肝油にはビタミンA、Dなどの脂溶性ビタミンが含まれており、過剰摂取になる恐れがあります。

 

3. 出血傾向のある人や妊婦さんが摂取する場合

オメガ3脂肪酸は、血液中の中性脂肪を減らして、血行をよくする働きがあります。そのため、抗凝固薬や抗血小板薬などの血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は注意が必要です。食事で青魚や魚介類を食べる分には気にしすぎる必要はありませんが、サプリメントを摂る場合は一度かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。

また、妊婦さんにとってもオメガ3脂肪酸は必要不可欠な栄養素です。妊婦さんがオメガ3脂肪酸を十分に摂ることで、胎児の脳の発達にいい影響を与えます。一方で、妊婦さんは普段の状態と違って、出血するリスクが高いです。妊婦さんがサプリメントを摂取する場合は、必ず主治医と相談して、適切な指導を受けるようにしましょう。

 

4. 魚にアレルギーを持っている場合

オメガ3脂肪酸はフィッシュオイル、EPA、DHAともよばれます。魚に多く含まれる油が主成分であり、魚介類にアレルギーを持っている人はアレルギー反応を起こすことがあるので注意してください。
 

オメガ3サプリメントの選び方
オメガ3サプリメントでオメガ3脂肪酸を補充したい時、質の良いサプリメントを選びましょう。オメガ3脂肪酸濃度が低かったり、不純物が多く含まれていたりするなど、サプリメントによって品質が異なることが考えられます。DHAやEPAの含有量が低い製品や不純物が多く含まれる製品、酸化を防止するような工夫が不十分な製品では、十分にオメガ3脂肪酸の効果を得られない可能性があります。
オメガ3サプリは効果なし?オメガ3脂肪酸の効果を引き出すための食べ方と選び方

 

 

オメガ3脂肪酸の良い摂取方法は?

オメガ3脂肪酸を摂取するには、大きくわけて次の3つがあります。メリットとデメリットをまとめてみました。

摂取方法

メリット

デメリット

魚や魚介類を食べる

  • いろんな栄養素が摂れる
  • 胆汁分泌を促進するので、サプリメントよりも効率的に吸収される

忙しい人にとっては毎日料理をするのが負担

えごま油・亜麻仁油・魚油を摂取する

無味無臭なので、魚が苦手な人でも摂取できる

加熱しない・常温以下で保存が必要で、使い方を間違えると意味がない

価格が高い

サプリメントで摂取する

  • 忙しい人・魚の匂いが苦手な人でも手軽に摂取できる
  • 摂取し続けることが簡単

食品で摂るよりも吸収率が落ちる

一番いい摂取方法は、青魚を食べることです。オメガ3脂肪酸は、さんまやサバ、イワシに豊富に含まれています。缶詰を使ってもいいでしょう。

しかし、一人暮らしで毎日料理をしない人や魚料理が苦手な人もいるでしょう。そんな人には、サプリメントがおすすめです。魚から摂取しようとすれば、週に何度も魚を焼かなければいけません。サプリメントであれば、毎日カプセルを飲むだけでOKです。

えごま油や亜麻仁油は、加熱調理をすると変性してしまうので注意。ヨーグルトやサラダにかけて食べましょう。また、冷蔵庫保存を推奨しています。

 

 

まとめ:オメガ3脂肪酸は重要な必須脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、健康維持のために必ず摂取しなければいけない栄養素です。体内で作ることはできないので、意識して食事やサプリメントで摂るようにしましょう。

オメガ3脂肪酸は、とくに1日の摂取上限量も決められていないので、他の栄養サプリメントよりも摂取が簡単です。また、心疾患や脳卒中、脂質異常症、認知症、肥満、メンタルヘルスなど、幅広い疾患のリスクを下げることがわかっているので、年齢や性別関係なく摂取をおすすめします。

私がおすすめなのは、週に2~3回ほど魚料理を食べること(1)、毎朝大さじ1杯分のえごま油や亜麻仁油を食べること(2)、オメガ3脂肪酸のサプリメントを補助的に摂取することです。このような習慣をつけることで(3)、より健康的な生活を送れるようになりますよ。ぜひ、実践してみてください。

参考資料:
  1. オメガ3脂肪酸」/ 厚生労働省eJIM
  2. 中性脂肪/トリグリセライド」/ e-ヘルスネット
  3. 3.脂質」/ 厚生労働省
  4. 食の起源 第3集「脂」 ~発見!人類を救う“命のアブラ”~」/ NHK
  5. α-LINOLENIC ACID AND THE RISK OF PROSTATE CANCER. WHAT IS THE EVIDENCE?」 / Volume 171, Issue 4, April 2004, Pages 1402-1407, The Journal of Urology
  6. Omega-3 fatty acids from plants are unlikely prostate cancer risk, study finds」 / University of California San Francisco HP