亜麻仁油は、日本人が不足しがちな「オメガ3系脂肪酸」の補給源として人気を集めています。便秘改善によるダイエット効果や腸内環境の改善など健康効果が多数報告されており、今も研究が進んでいる注目成分です。
しかし、摂り方を誤ると思わぬ健康被害を招くリスクもあります。管理栄養士が亜麻仁油の効果、副作用や注意点についても解説するので、賢く食事に取り入れて、健康力をアップさせていきましょう。
亜麻仁油とは?
亜麻仁油(flaxseed oil)は、亜麻の成熟した種子から抽出される黄金色の油です。亜麻仁(亜麻の種子)に、30~40%ほど含まれており、西洋では昔から食用として親しまれています。
近年、数多くの有効性が明らかになり、日本でもヘルシー志向の方々を中心に人気を集めている健康油です。
亜麻仁油の人気のヒミツは「オメガ3」
近年、日本のスーパーでもよく見かけるようになった亜麻仁油。人気の理由は「オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)」の一種であるα-リノレン酸(ALA)が豊富なことです。
α-リノレン酸は、植物由来の油や種子に豊富に含まれ、体内でDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変換されて働きます。DHAやEPAもオメガ3系脂肪酸に分類され、青魚に豊富な血液サラサラ成分として有名です。脳にも作用し、認知症予防や脳機能の向上に役立ちます(1)。
オメガ3系脂肪酸は健康維持に必要不可欠ですが、人間の体内では作りだせないため食品からの摂取が必要です。オメガ3系脂肪酸の摂取目安量は、成人で1.7~2.3g(2)となっていますが、魚離れが著しい日本人はほとんどの人が不足しています。
そこで、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)が手軽に摂取できる亜麻仁油に人気が集まっているのです。
また、魚を摂取しない菜食主義のベジタリアンにもオメガ3脂肪酸の補給源として指示されています。
参考:オメガ3とは?オメガ3脂肪酸の8つ効果一覧【医師監修】
必須脂肪酸とは?種類と多く含まれる食品
亜麻仁油に期待される健康効果は?
亜麻仁油は、豊富に含まれるオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)により数多くの健康効果が報告されて、特に認知機能、血流や腸内環境に健康効果が期待されています。
亜麻仁油の効果
- 効果1:脳機能の向上・認知症の予防
- 効果2:脂肪燃焼の効率アップ
- 効果3:コレステロールや血中脂肪の低下
- 効果4:心筋梗塞・動脈硬化・脳梗塞・心疾患などのリスク軽減
- 効果5:腸内環境の改善(腸内の炎症抑制・善玉菌の増加に関与)
- 効果6:便秘改善作用によるダイエット効果
- 効果7:血流の促進
- 効果8:うつ病のリスク軽減
- 効果9:アレルギーやアトピーの予防・改善
オメガ3脂肪酸の健康効果を得るには、夕食よりも朝食の摂取が有効であると報告されています。
朝食と夕食の2パターンで8週間オメガ3系脂肪酸を摂取し、中性脂肪の変化を観察したところ、夕食は変化がなかったのに対し、朝食では約20%も低下したのです。亜麻仁油は、朝の食事にとり入れましょう。
こちらもご参考に:オメガ3が多い油はエゴマ油?油のオメガ3の含有量ランキングの選び方と保存方を紹介
亜麻仁油の副作用は?危険性がある?
亜麻仁油による副作用やお体に対する危険性はほとんど報告されていません。
しかし、副作用のリスクがあると示唆されているので、摂取にあたっての注意点と一緒に確認しておきましょう。
示唆されている亜麻仁油の副作用
胃腸の不調
下痢といった胃腸の不調に対する予防や改善の効果が期待されますが、反対に下痢を誘発する可能性もあると示唆されています。
自分の体質に合わない場合は、摂取を控えましょう。
妊娠中のリスク
妊娠中の摂取で早産リスクが高まると示唆されています。(3)。血圧への影響
亜麻仁油は血圧を下げる可能性があるため、低血圧の人や血圧を下げる薬を服用している人は注意が必要です。
血圧の変動を避けるため、摂取量を適切に管理することが大切です。
アレルギー
亜麻仁油にアレルギー反応を示す人もまれにいます。皮膚に発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が現れた場合はすぐに使用を中止し、医師に相談することをおすすめです。
安全な亜麻仁油の摂取方法は?
亜麻仁油の危険性ほとんどがないですが、過剰摂取により、肥満や下痢の可能性があります。
また、亜麻仁油のオメガ3脂肪酸は酸化しやすい脂質で、保存方法も注意すべきことです。
ここからは、肥満や副作用を避けるため、おすすめの亜麻仁油の摂取目安量と摂取注意点を紹介します。
おすすめの亜麻仁油1日摂取目安量
亜麻仁油には豊富なオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)が含まれているため、おすすめの摂取目安量は厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」のオメガ3脂肪酸の摂取目安量を参考しましょう。
成人一日1.7g~2.3gのオメガ3脂肪酸の摂取がおすすめなので、サラダに亜麻仁油を小さじ1杯(約5g)かけることで、一日のオメガ3脂肪酸の摂取目安量を満たすことができます。
厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」オメガ3脂肪酸の摂取目安量
年齢 |
男性(g) |
女性(g) |
1~2歳 |
0.7 |
0.7 |
3~5歳 |
1.2 |
1.0 |
6~7歳 |
1.4 |
1.2 |
8~9歳 |
1.5 |
1.4 |
10~11歳 |
1.6 |
1.7 |
12~14歳 |
2.2 |
1.7 |
15~17歳 |
2.2 |
1.7 |
18~29歳 |
2.2 |
1.7 |
30~49歳 |
2.2 |
1.7 |
50~64歳 |
2.3 |
1.9 |
65~74歳 |
2.3 |
2.0 |
75歳以上 |
2.3 |
2.0 |
妊婦 |
- |
1.7 |
授乳婦 |
1.7 |
亜麻仁油の摂取の5つ注意点
1.過剰摂取による肥満
亜麻仁油は、1g=9kcalと高カロリーなので、摂り過ぎは肥満の原因になります。1日小さじ1杯(5g)程度を目安にしましょう。
2.容器の変質
カップラーメンやお惣菜に使用されるポリスチレン製の容器には、アマニ油をかけないようにしましょう。容器が変質して、中身がこぼれる可能性があります。
3.α-リノレン酸は熱に弱い
α-リノレン酸は熱に弱く、50度以上の温度で変質するため、加熱せずに納豆や豆腐などにかけていただきましょう。
4.酸化しやすい
酸化しやすいため、冷暗所に保管して1ヵ月を目安に使い切りましょう。酸化した油は、身体を老化させる有害物質が多くなります。
5.遮光できる瓶や箱で保存がおすすめ
光により酸化しやすいため、遮光できる瓶や箱に入っている商品がおすすめです。
また、亜麻仁油は血液をサラサラにするため、出血傾向のある方や、抗血小板薬・抗凝血剤を使用している方は、注意が必要です。外科手術をする方は少なくとも2週間前には摂取をやめるよう推奨されています。2週間以内に手術や・出産予定がある方は、亜麻仁油の摂取を避けましょう。
持病のある方は、使用前に医師に相談することをおすすめします。
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